2006 Fiscal Year Annual Research Report
鞭毛タンパク質フラジェリンの機能解析による細菌細胞表層構造の構築原理と鞭毛進化
Project/Area Number |
17380053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 幸作 京都大学, 農学研究科, 教授 (90142299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30273519)
三上 文三 京都大学, 農学研究科, 教授 (40135611)
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Keywords | 鞭毛タンパク質 / フラジェリン / 細菌細胞表層構造 / 体腔 / Sphingomonas属細菌 / 鞭毛 / T4ファージ / 鞭毛進化 |
Research Abstract |
A1株は鞭毛形成遺伝子を持っているが、鞭毛を形成しない。運動性もない。しかも、鞭毛繊維を形成する筈のフラジェリン(P5とP6の2種類)は、外膜に発現していることを明らかにした。その場合、少なくともP5はロッド管を経由せず、細胞質から直接に外膜に輸送されていることが示唆された。また、P5或はP6の遺伝子を破壊すると細胞表層構造が劇的に変化し、体腔の形成も不完全になる。P5とP6の両遺伝子を破壊すると細胞は死滅する。これらの結果より、A1株では、フラジェリンは細胞表層構造制御タンパク質として細胞の生死を左右する重要な機能を担っていることが明らかになった。さらに、両フラジェリンは解離定数がnMレベルの極めて強いアルギン酸結合能を有し、同様な機能を大腸菌のフラジェリンにも確認した。これにより、アルギン酸結合能は、フラジェリンの普遍的な性質であることを明らかにした。何故、アルギン酸なのかに関しては、多糖アルギン酸の合成された時点まで(鞭毛が形成された時点まで)遡ることが必要であるが、それはさておき、解離定数がnMレベルであることから、フラジェリンがアルギン酸シグナルの受容体として機能している可能性が示唆された。P5の立体構造を決定した結果、α1-ドメインがアルギン酸結合に関与することを示した。また、α-1ドメインの変異体を数多く作製し、アルギン酸結合に関るペプチド部分を特定した。また、フラジェリンのβ-ドメインの構造は、T4ファージの宿主接着に必要なshort tail fiberとbaseplateを結び付けているヒンジタンパク質gp11の立体構造と重なることを明らかにした。このようなドメインの相同性やアルギン酸結合能などから、鞭毛やファージを構成する分子の起源、進化、構造、機能の理解に有用な知見が得られた。また、フラジェリンは、通常は、細胞外で鞭毛繊維を形成し、細菌の運動を可能にする。螺旋菌スピロヘータではペリプラズムに局在して、細胞の特異な運動に関っている。A1株におけるフラジェリンの外膜局在化機構の解明が今後の課題として残された。
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Research Products
(6 results)