2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物免疫誘導に関わるフラジェリン認識情報のタンパク質リン酸化を介した伝達機構
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17380067
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
蔡 晃植 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (00263442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩野 恵 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (50160130)
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Keywords | 植物 / 分子認識 / 情報伝達 / フラジェリン / 植物免疫 / リン酸化 / カルシウム / エリシター |
Research Abstract |
植物の免疫システム反応には、過敏感細胞死や活性酸素の発生、細胞壁強化や抗菌性物質の生成などの様々な反応が含まれ、これら一連の反応が組織的に、かつ調和的に誘導されると病原菌は植物から排除される。申請者はこれまで、イネは非親和性植物病原菌の鞭毛構成タンパク質フラジェリンを認識することによって免疫システムを誘導することを世界で初めて明らかにすると同時に、イネによるフラジェリン特異的認識の分子機構を明らかにした。そこで、本研究では、フラジェリン認識後のカルシウムシグナルとそれによって活性化するタンパク質リン酸化機構を明らかにすることにより、イネに存在するフラジェリン認識シグナルの伝達と免疫システム誘導を明らかにすることを目的とした。本年度は、まずフラジェリン認識による細胞内Ca^<2+>動態とプロテインキナーゼの活性化について解析した。イネ培養細胞にYellow cameleon遺伝子を導入し、フラジェリンを処理したところ、非常に早い時間での細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が認められた。この様な反応は非親和性フラジェリンに特異的であり、EDTA等のCa^<2+>キレート剤を処理した場合でも認められなかった。EDTA処理や、親和性フラジェリン処理では免疫反応が誘導されないことが明らかになっているので、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇がフラジェリンシグナル伝達に必須であることが見いだされた。次に、OsCDPKの標的分子の特定とリン酸化カスケードの解析を行った。イネ15000遺伝子についてマイクロアレイで解析したところ、28個存在するOsCDPKファミリー遺伝子の中で、5つのOsCDPK遺伝子が発現誘導されることが明らかになった。そこで、これをすべてクローニングし、イネプロトプラストに導入し、細胞内での発現を行ったところ、この中の一つの分子のみが、活性酸素の発生を誘導した。このことは、このOsCDPK分子によって活性酸素発生に関与することをすでに同定しているNADPH oxidase(Osrboh)の活性化が起きていることを示している。現在、このOsCDPK分子によるOsrboh分子の活性化機構について解析を行っている。最後に、リン酸化カスケードシグナルによる免疫反応の一つである過敏感細胞死誘導の機構解析について行った。これまで我々は植物特異的転写因子(OsCIT)がOsCDPKの下流で過敏感細胞死を誘導することを示した。そこで、OsCITFのRNAiノックダウン形質転換体を作成したところ、過敏感細胞死の誘導能を失うことが明らかになった。さらに、この形質転換体を用いたマイクロアレイ解析によって、新たにこの転写因子の下流に制御される細胞死実行因子を明らかにした。
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Research Products
(1 results)