2005 Fiscal Year Annual Research Report
木質バイオマスの生成・分解・機能に対する計算化学解析
Project/Area Number |
17380103
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
重松 幹二 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教授 (00242743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 祐司 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (30236921)
岸本 崇生 北海道大学, 大学院農学研究科, 助手 (60312394)
河合 真吾 静岡大学, 農学部, 助教授 (70192549)
渡辺 隆司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80201200)
光永 徹 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教授 (20219679)
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Keywords | バイオマス / 計算化学 / 酵素反応 / 植物 / 有機化学 |
Research Abstract |
本年度は、計算化学解析に必要なソフトウェアとワークステーションを各研究拠点に設置し、それぞれの研究テーマに適切な計算手法の開拓を行った。また、9月に特別講師を交えた全体会議を行い、本年度の目標と解析戦略を検討した。 1.リグニンの重合機構 結晶構造がわかっているペルオキシダーゼをモデルに、開殻系分子軌道法によるラジカル電子の分子内分布を求めた。その結果、ヘムで発生するラジカルが約20Å離れたアミノ酸まで伝播する可能性があることを見出した。そのアミノ酸を酵素表面にむき出しになるよう形質転換させることによって、基質特異性が低い酸化酵素となる可能性を見出した。 リグニンモノマーの重合反応の解析では、ab initio分子軌道法による遷移状態の探索を行った。そして、種々の結合様式に対して遷移状態のエネルギー値から反応性を見積もったところ、実験結果との良い相関を得た。 2.バイオマスの熱化学分解 熱分解はホモリティックな解裂とイオン的解裂の両方が考えられる。計算手法の検査を行ったところ、通常の分子軌道解析に用いられる6-31G*レベルでは満足な結果が得られず、長距離のクーロン相互作用を考慮した6-31+G*レベルの高度な解析が必要であることがわかった。 3.リグニン分解酵素の作用機構 基質のHOMOを元に酸化反応を予測したところ、実験結果との良い相関を得た。したがって、実験では困難な有害性分解物質のスクリーニングに計算化学の手法が有用であることを確認した。 4.タンニンの酵素活性阻害機構 二量体(プロシアニジン)の静電ポテンシャルマップをab initio分子軌道法によって解析したところ、分子全体に立体的に負電荷が分布することがわかった。タンパク質凝集を引き起こさない単量体(カテキン)では平面的に分布することから、二量体の立体的静電ポテンシャル分布が複数のタンパク質を架橋する構造を形成し、凝集を引き起こしていると推察した。
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