2006 Fiscal Year Annual Research Report
魚類耳石の微量元素組成および安定同位体組成による回遊履歴と集団形成過程の解明
Project/Area Number |
17380113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大竹 二雄 東京大学, 海洋研究所, 教授 (20160525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 紀明 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線安全研究センター, 主任研究員 (80159665)
折橋 裕二 東京大学, 地震研究所, 助手 (70313046)
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Keywords | 耳石 / アユ / カラフトマス / サケ / 回遊履歴 / 集団構造 / 母川判別 |
Research Abstract |
本研究はアユやカラフトマス・サケなどの通し回遊魚の回遊機構や回遊に起因する地域集団の形成過程の解明を目的とする。本年度はアユやカラフトマスの耳石についてマイクロドリリング-質量分析法や二次元高分解能二次イオン質量分析法(Nano-SIMS)による同位体比分析(δ^<18>O、δ^<13>C、^<87>Sr/^<86>Sr)を実施するとともに、環境水の同位体比(δ^<18>O、^<87>Sr/^<86>Sr)との対応を確認した。 【1.アユの母川判別および回遊機構】:伊勢湾流入二河川(長良川、櫛田川)で採集された産卵アユの耳石と河川水のSr同位体比をマイクロドリリング-質量分析法やTIMSにより分析した結果、両者がよく対応し、Sr同位体比がアユの母川判別に有効であることが明らかになった。さらに淀川を遡上したアユの耳石核部分のSr同位体比をNano-SIMSにより分析した。その結果、耳石核部分の同位体比は琵琶湖水と同様の値を示し、淀川では琵琶湖で孵化した個体が降海-遡上している可能性が示された。なお、分析に供した個体は遺伝学的に琵琶湖産アユであることが確認され、Sr同位体比分析の結果と一致した。以上より、アユの母川を含む回遊と遡上個体群の集団構造解析が可能になった。 【2.カラフトマスやサケの降海直後の分布特性、および回帰個体の由来判別】:北海道根室・伊茶仁孵化場において水温コントロール下で飼育されたカラフトマス稚魚の耳石のδ^<18>O、δ^<13>Cをマイクロドリリング-質量分析法により分析し、飼育水温との関係を調べた。その結果、耳石δ^<18>O-δ^<13>Cマッピングから生息水温の違いを判別可能であることが示され、孵化場所の水温環境が異なる野生魚と酵化場魚を耳石δ^<18>O・δ^<13>Cから判別可能であることが明らかになった。以上より、現在北海道根室沿岸域で採集を行っているカラフトマス稚魚や回帰個体、大槌湾およびその周辺沿岸域で採集を行っているサケ稚魚などの耳石δ^<18>O・δ^<13>C分析を行うことにより、沿岸域での集団構造、母川回帰性の低いカラフトマス回帰個体群の集団構造解析が可能になった。
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Research Products
(3 results)