2005 Fiscal Year Annual Research Report
地域公共財の供給メカニズムと農業水利資本形成:南アジアにおける農民の維持管理行動
Project/Area Number |
17380127
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 巧 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (40178413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長南 史男 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (00113697)
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Keywords | ネパール / 灌漑 / 水利組合 / ラオス |
Research Abstract |
本研究は,ネパールのカトマンズ盆地に位置するSankhu村の農家を対象として灌漑水の需要を明らかにした。調査対象農村の灌漑水の確保が容易である上流部では、「米-夏馬鈴薯-冬馬鈴薯」の年3作の作付体系が普及している。水路を維持管理し水を配分するためのフォーマルな水利組合は存在しない。農民の灌漑水需要が水利組合の形成に大きな影響を与えていると考えられる。そこで、本研究では、コンジョイント分析によって、夏馬鈴薯栽培のための灌漑水に対する農民の支払意志額を明らかにした。灌漑水需要に影響を及ぼす要因として、(1)灌漑の増加回数、(2)1回の灌漑水増加に対する料金水準、(3)夜間灌漑の有無、の3つを設定し選択実験を実施した。分析の結果、以下のことが明らかになった。灌漑水の支払意志額に影響を与える要因は,灌漑水の増加対象となる圃場の位置であった。灌漑システムの下流に位置する圃場を耕作する農民ほど高い支払意志を持っていることが明らかになった。また、耕作面積に占める灌漑困難な農地割合が高かったり、あるいは、馬鈴薯単収が低い圃場を耕作する農家ほど灌漑水に対する支払意志額が高かった。夏馬鈴薯のための灌漑回数を1回増加させることに対する支払意志額を算出した結果、灌漑面積1ロパニあたり514ルピーであった。これは、1回の灌漑増加により得られると予想される粗収益の79%を占める。また、夜間に灌漑しなくて済むのであれば、1ロパニあたり198ルピーの支払意志額をもつことも明らかになった。ラオスについては、Ban Vuen-Tonhen水利組合を調査した。この組合員の中には水利費を支払わない農家が存在しているため、この要因の解明に努めた。個々の農家の水利費の支払能力を求めた結果、少なくとも経済的には支払能力はあることが明らかとなった。
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