2007 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシグナリング:解糖系代謝中間体によるシグナル伝達の意義とメカニズム
Project/Area Number |
17380201
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 善晴 Kyoto University, 農学研究科, 准教授 (70203263)
|
Keywords | 代謝ストレス / 酵母 / シグナル伝達 / メチルグリオキサール / MAPキナーゼ / PI3キナーゼ / メンブレントラフィック |
Research Abstract |
メチルグリオキサール(MG)は解糖系から派生する代謝物である。しかしながらMGは、その反応性の高さからDNA、 INA、タンパク質などとin vitroでadductを形成することが報告されており、結果的に細胞機能に異常を引き起こすと考えられている。また、細胞内MGレベルの上昇は糖尿病やある種のがん(肺がんや大腸がん)などの疾患との関連が指摘されているが、そのメカニズムの詳細についてはほとんど明らかになっていない。その最大の理由は、MGの作用点とその作用機序がほとんど明らかにされていないことにある。私は、MGは単なる代謝中間体ではなく、シグナルイニシエーターとして細胞生理に対して積極的な役割を持ち、MGの代謝異常によって不必要、あるいは必要以上のシグナルが流れることで細胞機能が破綻し、種々の疾患が引き起こされるのではないかという作業仮説をたてている。そこで本研究解題では、高等真核生物のモデル系として確立されている酵母を用い、(1)MGが作用する標的分子の同定と(2)MGが引き起こす細胞応答機能の解明、ならびに(3)MGによる細胞機能障害の分子機序の解明を試みる。 平成17〜18年度では、MGが分裂酵母のp38MAPキナーゼホモログであるSpc1を活性化すること、さらにMGの主要代謝酵素グリオキサラーゼIが欠損した株では、MGによるSpc1のリン酸化状態が長時間継続することを見いだし、その原因として、MGがSpc1を脱リン酸化するプロテインホスファターゼを阻害することで、Spc1のダウンレギュレーションを抑制していることを明らかにした。また、昨年度の遺伝学的な解析からMGとメンブレントラフィックとの関連性を見いだした。 そこで平成19年度では、メンブレントラフィックに重要な役割を果たすボスファチジルイノシトール代謝とMGとの関係について解析を進めた結果、MGはホスファチジルイノシトール(3,5)ビスリン酸レベルを上昇させることを明らかにした。
|
Research Products
(4 results)