2005 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症モデル動物における認知機能と神経変性に関する脆弱因子の探索
Project/Area Number |
17390018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鍋島 俊隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (70076751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 幸裕 名城大学, 薬学部, 教授 (90397464)
新田 淳美 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教授 (20275093)
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Keywords | フェンシクリジン(PCP) / 統合失調症 / グルタミン酸作動性神経 / NMDA受容体 / 細胞内情報伝達系(CaMKII) / グリア細胞 |
Research Abstract |
非競合的N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬のフェンシクリジン(PCP)は、ヒトに統合失調症と類似した情動・認知障害を惹起させる。PCP(10mg/kg/day)を14日間連続投与したマウスにおいて強制水泳ストレスによる無動状態が増強(意欲低下の増強)され、水探索試験における潜在学習が障害(認知障害)される。これらの行動障害とグルタミン酸作動性神経機能の関与について調べたところ、強制水泳ストレス負荷後および水探索試験の訓練後、saline連続投与マウスの前頭前皮質におけるCa^<2+>/calmodulin kinaseII(CaMKII)リン酸化蛋白の発現は、非ストレスおよび非訓練saline連続投与マウスのそれに比べて有意に増加していたが、PCP連続投与マウスではそのような増加は認められなかった。一方、PCP連続投与マウスの前頭前皮質における細胞外グルタミン酸の基礎遊離量は、saline連続投与マウスのそれに比べて有意に減少していた。PCPの投与回数に依存して前頭前皮質のグリア細胞の活性化、グリア型グルタミン酸トランスポーターのGLASTの発現量の増加、神経細胞の萎縮が認められた。PCP連続投与マウスの前頭前皮質にグルタミン酸トランスポーター阻害剤やNMDA型グルタミン酸受容体グリシン部位の作動薬であるグリシンを注入すると、情動・認知障害や前頭前皮質のCaMKIIの活性の低下が緩解した。以上の結果からPCP連続投与によりグリア細胞の活性化や神経細胞の萎縮が惹起され、前シナプス機能やNMDA-CaMKII情報伝達系の機能が阻害され、情動・認知障害が惹起されるものと示唆される。一方、胎生期の胎児の大脳皮質に子宮内電気穿孔法により統合失調症関連遺伝子の発現を抑制したマウスを作製し、行動解析を行った結果、認知障害が認められた。今後、情動行動についても検討し、行動障害の発症機構における細胞内情報伝達系の関与について検討する。
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Research Products
(5 results)