2005 Fiscal Year Annual Research Report
ネトリンとネトリンレセプターによる細胞死の制御とヒト癌細胞でのその破綻について
Project/Area Number |
17390098
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
荒川 博文 国立がんセンター(研究所及び東病院臨床開発センター), 生物物理部, 部長 (70313088)
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Keywords | ネトリン / ネトリンレセプター / アポトーシス / 細胞死 / p53 / 細胞死抑制 / カスペース / 神経軸索誘導 |
Research Abstract |
ネトリンとそのレセプターは、発生過程における神経細胞の軸索伸長反応において重要な働きをする神経軸索誘導関連分子であるが、一方で細胞死の制御に深く関わる事実が明らかとなっている。我々はネトリンとそのレセプターによる細胞死制御のメカニズムの解明と、ヒトがん細胞におけるネトリン・ネトリンレセプター経路の破綻について研究を進めている。本年度は、ヘパリンカラムで精製した生理的なヒトネトリン蛋白質を用いて実験を行い、ネトリンがアデノウイルスで導入された外来性p53の過剰発現によるp53誘導性のアポトーシスを完全に抑制する事実を見出した。この時、p53蛋白質は細胞内で正常に発現し、Noxa,PUMA,BAXをはじめとしたアポトーシス関連p53標的遺伝子やp21/WAF1,p53R2,MDM2など調べたすべてのp53標的遺伝子の発現誘導が観察され、p53による標的遺伝子の転写活性化は全く正常に起こっていた。一方で、p53依存性アポトーシスに重要とされているカスペース9やカスペース8,さらにはカスペース3の活性は完全に抑制されていた。また、細胞死抑制シグナルに重要とされるAKTのリン酸化やFAKのリン酸化はむしろネトリン添加群で低下していた。このネトリンによるアポトーシスの抑制作用は、正常型p53を有する大腸癌細胞株におけるガンマ線照射時のアポトーシスでも同様に観察された。以上の結果から、ネトリンによるp53依存性アポトーシスの抑制は、p53の転写活性化能の抑制を介して行われているのではなく、アポトーシス・カスケードの比較的最終段階に近い、カスペースの活性化の抑制を標的としている可能性が示唆された。我々は、このネトリンによるアポトーシス抑制シグナルには、どのようなレセプターが関与しているのかについて、引き続き、解析を進めている。
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Research Products
(2 results)