2006 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌発生におけるWntシグナル亢進とCOX-2発現誘導の相互作用
Project/Area Number |
17390114
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大島 正伸 金沢大学, がん研究所, 教授 (40324610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 浩子 金沢大学, がん研究所, 助手 (80362515)
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Keywords | 胃癌 / 炎症 / COX-2 / Wnt / マウスモデル |
Research Abstract |
胃癌組織ではプロスタグランジン合成酵素であるCOX-2発現と、COX-2の下流でプロスタグランジンE_2(PGE_2)を産生するmPGES-1の発現が誘導されている。また、β-cateninの核内蓄積で検出されるWntシグナルの亢進も、約50%の胃癌組織で認められた。本研究では、胃癌発生におけるPGE_2とWntの作用を解明する目的で、胃粘膜上皮でCOX-2とmPGES-1を同時に発現するトランスジェニックマウス(K19-C2mEマウス)、およびWnt1遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(K19-Wnt1マウス)を作製して交配実験を行ない、病理学的解析を行なった。 K19-C2mEマウスの胃粘膜では、炎症反応を伴う過形成が認められたが異形性変化は認められなかった。一方、K19-Wnt1マウスでは胃粘膜上皮の分化が抑制されて、TFF2発現陽性の未分化上皮細胞の割合が増加し、限局性の前癌病変が散発性に発生した。前癌病変は異形を伴う上皮細胞が異常に分岐しながら形成されていたが、50週齢まで観察しても腫瘍発生には至らなかった。 多くのヒト胃癌組織では、WntとPGE_2の双方が活性化しているので、作製したモデルマウスを交配して、2重トランスジェニックマウス(K19-Wnt1/C2mEマウス)を作製した。このマウスの胃粘膜には大きな腫瘍が発生し、組織学的には異形性を伴う腫瘍上皮細胞が異常に分岐し、粘膜下への浸潤も認めた事から、胃癌と診断した。これまでにK19-Wnt1/C2mEマウスでの胃癌発生頻度は100%である。以上の生体モデルを用いた研究結果から、WntとPGE_2の双方が活性化する事が胃癌発生に重要である事が明らかとなった。したがって、PGE_2産生経路や伝達経路の遮断が、胃癌発生予防に有用である可能性が示された。
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Research Products
(4 results)