Research Abstract |
低酸素は種々の腫瘍において細胞のストレスの重要な要素である。低酸素下で発育する腫瘍細胞は化学療法や放射線療法に耐性になりやすく予後不良である。低酸素に陥ると,HIF-1などの遺伝子が誘導され,解糖系,血管新生,細胞生存に関わる遺伝子群の発現が亢進する。アポトーシスを抑える遺伝子発現も亢進することが多くBNIP3もそのような遺伝子の一つである。今回は,泌尿器系腫瘍(腎細胞癌,膀胱癌)患者の腫瘍組織,対照となる近傍の正常組織をペアとして14症例を対象として,BNIP9をはじめとして,LDHA,LDHB,CKB,CKM,SNCG,MAD2,NPTX2,SARP2,_P16,GSTP1の計11種類の遺伝子のプロモーター領域のメチル化を調べた。DNAメチル化の解析は,BiPS法,MSP法,COBRA法,Bisulfite sequencing法を複数組み合わせて行った。また,RT-PCR法でそれぞれの遺伝子の発現量を調べた。 その結果,SARP2は12症例でメチル化バンドが認められ,また正常組織にも7例で腫瘍組織よりも少ないながらもメチル化バンドが認められた。BARP2遺伝子の発現は,正常組織で強く腫瘍組織では発現消失がみられる傾向が認められた。BNIP3遺伝子は,6症例でメチル化が認められ,メチル化している組織ではBNIP3発現が低下している傾向が認められた。すなわち,BNIP3遺伝子の発現が低下し,アポトーシス制御が甘くなっていることが推測された。ただ,2例については,対照とした正常組織にもメチル化が認められた。これらの症例の血液細胞のDNAメチル化についてはまだ調べていないので,エピミューテーションかどうかは明らかになっていない。それ以外の遺伝子のメチル化は非常に低頻度であった。正常組織でもメチル化している原因としては,組織特異性,加齢による影響,炎症など腫瘍以外の病態の存在なども考えられるため,そのメカニズムを明らかにする必要がある。
|