2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト遺伝子導入動物を用いたプラスチック可塑剤の毒性の種差解明とリスク評価
Project/Area Number |
17390169
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
那須 民江 Nagoya University, 大学院・医学研究科, 教授 (10020794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上島 通浩 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (80281070)
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Keywords | フタル酸ジー(2-エチルヘキシル) / 肝腫瘍 / PPARa / ノックアウトマウス / 細胞周期 / アポトーシス / 炎症 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
0、0.01、0.05%のDEHPをウスに約22か月与えたところ、予想に反して肝腫瘍の発生はPPARaノックアウトマウスの方が高かった。そこでこのメカニズムの解明を、非腫瘍組織と腫瘍組織を用いて両面から行った。非腫瘍組織を用いた研究では、ノックアウトマウスの酸化ストレスレベルは野生型マウスより高く、炎症を示すp65やp50の発現レベルも高く、炎症のマーカーであるALTの活性値も高かった。従って、ノックアウトマウスの酸化ストレスの高いことが炎症を誘発し、腫瘍発生につながっていると想定された。一方、マイクロアレイによる網羅的解析では、ノックアウトマウスと野生型マウスで遺伝子発現プロファイルが全く異なっていた。細胞周期,アポトーシス誘導に関係するパスウェイ上の遺伝子に,ノックアウトマウスと野生型マウスの差が見られたため,これらのパスウェイ上の遺伝子についてリアルタイムPCRで確認を行った。その結果,ApaflとGadd45aの遺伝子は、野生型のマウスの肝腫瘍の組織で発現が亢進していた。これに対して、ノックアウトマウスの肝臓腫瘍の組織ではこれらの遣伝子の発現に変化は認められかった。一方、cyclinB2とMcl1の発現は、ノックアウトマウスの肝臓腫瘍でのみ増加していた。Gadd45aは,細胞分裂を阻害し,細胞のG2/M期への移行を停止する。一方,CyclinB2は,細胞のG2/M期を促進する作用を持つ。これらの結果から、DEHPを曝露したPparaノックアウトマウスで、Gadd45aの調節によるG2/M期の細胞周期停止の抑制が起こらず,さらにCaspase-3依存のアポトーシスが抑制された結果肝腫瘍を誘発した可能性が考えられた。
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