2007 Fiscal Year Annual Research Report
H.ピロリ感染ネズミにおけるカビ毒素、亜硝酸塩添加及び沃素欠乏食による胃発癌実験
Project/Area Number |
17390176
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
青木 一雄 Oita University, 医学部, 准教授 (60201282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 達生 大分大学, 医学部, 教授 (80080555)
海老根 直之 大分大学, 医学部, 助教 (30404370)
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Keywords | 胃がん / 砂ネズミ / ステリグマトシスチン / ヘリコバクタ・ピロリ菌 / 亜硝酸塩 / 塩化ナトリウム(NaC1) / 発がん |
Research Abstract |
当研究室では、今日までヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori、以下HPと略す)菌に感染させた砂ネズミにアスペルジールス属のカビ毒素ステリグマトシスチン(ST)、食塩、ヨー素及び亜硝酸塩の投与を行い、その胃発がんに対する食物関連化合物の相乗作用について病理組織学的ならびに分子学的な実験研究を進めてきた(Scand J Gastroenterol,2003(4)360-369,Food & Chem 2005(43)1773-1780,W J Gastroenterol,200612(14)2174-2180,日本衛生学会誌2006等に投稿)。 さらにこれらの研究を発展させ、これまで行ってきた曝露濃度よりも低濃度である10ppbのST及び10ppmの亜硝酸のH.pylori菌感染砂ネズミにおける胃発がんへの関与の有無を明らかにするために、対照(HP非感染)群、HP非感染ST1000ppb投与群、HP感染群、(HP感染+ST10ppb)群、(HP感染+STIOOppb)群、(HP感染+ST1000ppb)群、(HP感染+亜硝酸塩750ppm)群、(HP感染+亜硝酸塩3000ppm)群、(HP感染+5%NaCI)群、(HP感染+10%NaCI)群、(HP感染+ST1000ppb+10%NaC1)群の計11群、HP非感染ST1000ppb投与群のみ10匹で他の10群はすべて1群15匹からなる動物実験系を組み、各曝露は、75週齢より24週間に経口飼料あるいは曝露物質を飲水中に溶解し摂取させ、死亡のための観察打ち切り例を除く147匹を99週齢に屠殺、解剖し、免疫染色(p53、PCNAなど)を含む胃の病理の組織変化を観察した。p53免疫染色発現率は、すべてのHP感染群及び曝露群において、対照群(p53免疫染色発現率2.2%)に比し有意な発現率(22.8〜49.0%)の増加を示していた。また、HE、PAS、及びAlucian Blue(pH2.5、1.0)染色を行い、各群5匹の組織変化を詳細に観察した。その結果、Active gastritisの組織変化所見は、対照群と比較し、HP非感染ST1000ppb群、(HP感染+ST10ppb)群、及び(HP感染+亜硝酸塩750ppm)群の3群を除く他の7群すべて有意に認められた。また、胃の前がん病変であると考えられている腸上皮化生(Intestinalmetaplasia)は、対照群と比較しHP非感染ST1000ppb投与群、(HP感染+ST10ppb)群、及び(HP感染+亜硝酸塩3000ppm)群の3群を除く、7群のHP感染曝露群において有意な病理組織変化であることが明らかになった。これらの研究は、HP感染に関与する胃発がんに関与する食物関連化合物の相乗効果を解明する一助となり、今後のHP感染関連上部消化管疾患の予防や進展防止に寄与するものと思われる。
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