2006 Fiscal Year Annual Research Report
労働における裁量度を考慮した労働時間と主要疾患罹患率の関係の症例対照研究
Project/Area Number |
17390193
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
垂水 公男 Osaka University, 医学系研究科, 非常勤講師 (90155276)
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Keywords | 労働時間 / 急性心筋梗塞 / 症例対照研究 / 職業 / 心理負担要因 / オッズ比 |
Research Abstract |
平成17年から平成19年にかけて、近畿圏の5医療機関と共同して本研究を実施した。具体的には、本研究の実施期間中に同医療機関に急性心筋梗塞で入院した25-69歳の男性患者について、心筋梗塞の危険因子ならびに労働時間、労働の心理負担、職業等の基本属性を調査票を用いて調査した。調査は、同医療機関の専属の医療コーディネータならびに主治医が担当し、患者本人の同意を得た上で調査票の記入を依頼した。これら症例に対応して、各症例の近隣の住人について姓、年齢(5歳階級)をマッチさせて対照を選択し(症例:対照=1:3)、これらの住人について症例と同内容の調査票を使用して労働時間等について調査表への記入を依頼した。住民への調査は、専門の民間調査会社に委託した。上記の本研究の主旨と研究の手続きについて、大阪大学大学院医学系研究科ならびに各協力医療機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した。 本研究に関して収集できた症例と対照の概数は、それぞれ120と400であった。分析項目によって異同はあるが、現時点で集計可能な約300について分析を行った結果、週あたり50時間以上の労働時間のオッズ比は1.5〜1.8であり従来の報告より小さな値であった。また、従来からの冠危険因子である肥満度、喫煙習慣、運動不足は正、毎日の飲酒習慣は負の危険要因であった。労働の心理負担要因である仕事の要求度、裁量の自由度、これらを統合した仕事ストレスのうち、裁量の自由度は急性心筋梗塞の発症について有意な要因として取り出された。その一方で、睡眠時間と休暇取得機会が有意な要因として取り出されていた。 現時点までの分析では、労働時間はある一定の時間数(50時間)を超える場合には、心筋梗塞の危険要因となる可能性は否定できないと思われる。しかし、それとともに裁量の自由度ならびに睡眠時間や休暇取得がより大きなオッズ比を示していたことは、疲労の蓄積とともに疲労の回復過程の確保が実際には重要なであることを示唆しているとも考えられた。
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