2005 Fiscal Year Annual Research Report

漢方薬の薬効を利用した脳血管性痴呆治療標的分子の探索・同定とその生理機能解析

Research Project

Project/Area Number	17390208
Research Institution	University of Toyama
Principal Investigator	松本欣三富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10114654)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	櫻井宏明富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教授 (00345571) 東田道久富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教授 (20207525) 村上孝寿富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助手 (00377269)
Keywords	chronic hypoperfusion / special cognitive deficit / Kampo Medicine / chotosan / endogenous factor(s) / gene analysis / saikokeishito / cholinergic system
Research Abstract	本研究は、釣藤散をはじめとする漢方薬の脳虚血病態動物における学習記憶改善効果を利用して脳虚血処置と漢方薬投与の操作に対して相反性に発現変化する脳内因子の探索同定と、その脳内生理機能の解析により脳血管性痴呆の治療に資する標的分子を開発することを目的とする。脳内因子を探索する基礎実験では雄性ICRマウスの両側総頸動脈を永久結紮し、慢性脳虚血病態モデル(P2VO)動物を作製した。手術2週間後からP2VO動物に(1)水(対照群)、(2)漢方方剤釣藤散エキス、(3)釣藤散とは臨床的用途の異なる方剤(柴胡桂枝湯)の経口投与を開始し、各群の学習行動を水迷路課題で評価した。また(4)コリンエステラーゼ阻害薬タクリン(TH)を参照薬として用いた。 P2VO対照群では偽手術群(Sham)と比較して顕著な空間認知障害が認められた。釣藤散またはTH投与により障害は改善されたが、柴胡桂枝湯は無効であった。釣藤散及びTHの効果はアセチルコリンM1受容体拮抗薬ピレンゼピンの併用でほぼ完全に抑制されたことから、P2VO誘発空間認知障害に対する改善効果は釣藤散およびTHに特徴的な作用であり、これらの効果に中枢コリン神経系の賦活が関与することが示唆された。行動実験終了後、各群の前脳皮質から全RNAを抽出し、IntelliGene III Mouse CHIPを用いてDNAアレイ解析を行った。検討した4445種遺伝子のうちP2VOにより発現が1.5倍以上増加または0.67倍以下に低下したものが98種検出された。また釣藤散投与によって発現変化した遺伝子として19種検出され、そのうちP2VO処置と相反変化したものは11種検出された。またP2VO処置と柴胡桂枝湯投与で相反性変化した遺伝子種は検出されなかった。これらの結果から、釣藤散で変動した遺伝子種に慢性虚血誘発学習行動障害の改善に関わる因子が存在する可能性が推察された。