2006 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬の薬効を利用した脳血管性痴呆治療標的分子の探索・同定とその生理機能解析
Project/Area Number |
17390208
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松本 欣三 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10114654)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 宏明 富山大学, 助教授 (00345571)
東田 道久 富山大学, 助教授 (20207525)
村上 孝寿 富山大学, 助手 (00377269)
|
Keywords | chronic hypoperfusion / cognitive deficit / Kampo Medicine / chotosan / endogenous factor(s) / gene analysis / saikokeishito / cholinergic system |
Research Abstract |
本研究は、釣藤散をはじめとする漢方薬の脳虚血病態動物における学習記憶改善効果を利用して脳虚血処置と漢方薬投与の操作に対して相反性に発現変化する脳内因子の探索同定と、その脳内生理機能の解析により脳血管性痴呆の治療に資する標的分子を開発することを目的とする。両側総頸動脈を永久結紮した慢性脳虚血病態モデル(P2VO)マウスを用い、手術2週間後から物体認知行動試験により非空間的学習記憶能を評価した結果、P2VO動物では顕著な認知障害が認められた。学習記憶障害を発現したP2VO動物に水(対照群)、漢方方剤釣藤散エキス、釣藤散とは臨床的用途の異なる方剤(柴胡桂枝湯)及びコリンエステラーゼ阻害薬タクリン(TH)を5日間、反復経口投与後、再び物体認知試験を行ったところ、釣藤散及びTH投与により障害は有意に改善された。釣藤散とTHが類似した学習記憶障害改善効果を示すことおよび前年度の研究成績から釣藤散の作用にP2VO動物の中枢コリン神経系が関与することが強く示唆された。これらの結果を踏まえ、各薬物処置群の脳より全RNAを抽出し、アセチルコリン(ACh)神経系マーカー遺伝子の発現量変動をRT-PCR法で解析した。その結果、P2VO処置により学習記憶障害を生じた動物では脳内ACh合成酵素(ChAT)、ムスカリン性M3及びM5受容体の遺伝子発現量が有意に低下したが、ムスカリン性M1,M2,およびM4受容体遺伝子発現量に変動がなかった。一方、釣藤散及びTH投与により学習記憶障害が改善されたP2VO動物ではこれらの遺伝子発現量は偽手術群レベルまで回復していた。従って脳虚血病態動物の学習記憶障害に対する釣藤散の改善効果の少なくとも一部は、中枢コリン神経系機能の賦活によるものと考えられ、これにはChATやM3及びM5ACh受容体の脳内遺伝子発現調節系あるいは調節因子が関与する可能性が示された。
|
Research Products
(2 results)