2007 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬の薬効を利用した脳血管性痴呆治療標的分子の探索・同定とその生理機能解析
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17390208
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松本 欣三 University of Toyama, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10114654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 宏明 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (00345571)
東田 道久 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (20207525)
村上 孝寿 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (00377269)
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Keywords | chronic hypoperfusion / cognitive deficit / Kampo Medicine / chotosan / endogenous factor(s) / cholinergic system / macrophage colony刺激因子 / gene expression |
Research Abstract |
本研究は、釣藤散をはじめとする漢方薬の脳虚血病態動物における学習記憶改善効果を利用して脳虚血処置と漢方薬投与の操作に対して相反性に発現変化する脳内因子の探索同定と、その脳内生理機能の解析により脳血管性痴呆の治療に資する標的分子を開発することを目的とする。本年度は両側総頸動脈を 永久結紮した慢性脳虚血病態モデル(P2VO)ラットを用い、 P2VO処置初期に発現変化する遺伝.子を指標 に、本研究課題において脳血管性認知障害する治療効果を示すことが明らかとなった漢方薬釣藤散の影 響を検討した。P2VO手術の24時間後より水または釣藤散(75-225mg/kg)を1日1回、計4日間、反復 経口投与した。その結果、P2VO処置により発現変化した脳内遺伝子のうち、虚血や外傷による神経損傷 に対して抑制的に働くことが示唆されているマクロファージコロニー刺激因子(MCSF)の発現が釣藤散投 与により上昇することを見出した。一方、M-CSF以外のコロニー刺灘因子(G-CSF及びGM・CSF)のmRNA発現に対して釣藤散投与は無効であった。釣藤散の脳内M-CSF mRNA発現増加効果ρ機序を明ら かにする目的で、C6Bu-1グリオーマ細胞を用いて件とした結果、釣藤散処置した細胞では濃度依存性の M-CSF mRNA発現量の上昇が認められた。また釣藤散の効果は選択的PKC阻害薬Ro31-8220によって完 全に抑制された。一方、選択的PKA阻害薬H-89(10μM)は釣藤散誘発のM-CSF mRNA発現促進効果を 抑制せず、むしろ増強する傾向が認められた。近年、M・CSFは動脈硬化の進展を防止や、実験的に誘発し た虚血性傷害に対する神経細胞保護に関わるほか、M-CSF産生の欠損で脳の虚血性傷害が増悪することが 報告され、M-CSFが脳虚血傷害に対し有益な作用を持っ可能性が示唆されている。本研究では釣藤散が PKC系を介して慢性脳虚血動物の脳内M-CSF mRNA発現を増加させる可能性が明らかとなり、この作用 が脳血管性認知症病態に対する釣藤散の有効性にも関与することが示唆された。
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Research Products
(3 results)