2006 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血初期および片頭痛前兆にみられる大脳皮質拡延性抑制と毛細血管血流変化
Project/Area Number |
17390255
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 則宏 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10158975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 慎一 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (20236285)
伊東 大介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80286450)
長田 高志 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30348635)
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Keywords | 脳虚血 / 片頭痛 / 脳血流 / 大脳皮質拡延性抑制 / 脳毛細血管 |
Research Abstract |
申請研究計画に沿い実験を行った。その進捗状況を報告する。 (1)昨年度完成した高速(500枚/s)生体用共焦点レーザー顕微鏡装置を用いて、ラット約100匹の実験を行った。麻酔下ラット脳皮質を頭窓より観察、約50-100μmの深さの実質内にある毛細血管の中を流れる膨大な数の赤血球一個一個の速度の10秒間の頻度分布を求めた。そのすべての赤血球の認識、測定、統計的な処理には研究室で開発したMatlab応用ソフト(KEIOIS-2)が威力を発揮した。すなわち関心領域におけるすべての赤血球の軌跡画像、移動距離/時間の計算、それぞれの速度の画像化した後、FITC-dextranで確認した毛細血管赤血球の速度情報をエクセルシートに移し、統計計算した。その結果は赤血球の速度は教科書に記載されている1mm/sの速度を大きく上回り、0.15-9.40mm/sの範囲で平均速度2.05±1.59mm/sを示した。これは高速度撮影で始めて捉えられた高速度赤血球が含まれた為である^<1)>。その中にはthoroughfare channel(TC)を流れる赤血球も含まれ、統計的な棄却検定にて6.5mm/s以上の赤血球が母集団に比べて異常に速く毛細血管を通過していると判定され、量的に約30%の毛細血管がTCの範疇に属するものと計算された^<2)>。また通過する赤血球速度と毛細血管の口径形態的変化を検討した^<3)>。 (2)昨年度に引き続きラット脳において大脳皮質拡延性抑制(CSD)を誘発し、反射光の波状の広がり、および組織内毛細血管赤血球速度を調べた。CSDに伴う神経細胞の一時的機能の停止(stunning)は画像の光学的な密度の減少として捉えられ、これは神経細胞の脱分極に伴う細胞膜による反射が減少すること、および毛細血管の中の赤血球の数の減少によるものと考えられた。しかしこの両者の画像は必ずしも一致しなかった。現在臨床的に脳組織における反射光の変化はNIR spectroscopyにて、赤血球すなわちhemoglobin量、あるいは酸化度変化として計算されているが、これは大きな誤りであることを指摘した^<4,5)>。反射光の波状変化の中心部は、必ずしもその誘発のためにK^+注入した部位とは一致せず、しかもその起点は1例では2箇所から広がっていた。これはCSDすなわち片頭痛が癲癇の発作のように、ある特定の神経細胞が異常放電を開始したことを示唆する所見である。これは片頭痛の発生機序として重要と思われ更に追求する。 (3)昨年度はCSDへのグリア細胞の関与を調べるために脳組織インピーダンス法を用いた。しかしこれは組織障害が強すぎて中止した。そこでグリア組織(突起も含む)を生体内で染色(sulforhodamin)する方法を用いて、毛細血管の中を流れる赤血球との関係を調べた^<6,7)>。さらに組織の酸素分圧の測定に成功した。
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Research Products
(17 results)