2005 Fiscal Year Annual Research Report
抗リン脂質抗体の病原性:プロテオミクスの手法を用いた分子生物学的解析
Project/Area Number |
17390286
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 隆夫 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80146795)
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Keywords | 抗リン脂質抗体症候群 / 血栓症 / p38MARK / Tissue Factor(TF) / 抗リン脂質抗体 |
Research Abstract |
抗リン脂質抗体症候群とは、多彩な動・静脈血栓症、習慣流産および血小板減少を主要徴候として、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなどの抗リン脂質抗体(リン脂質やリン脂質結合タンパク)に対する自己抗体の出現を特徴とする、難治性の自己免疫疾患である。抗リン脂質抗体症候群の本態は血栓症であり、現在ではリスクファクターの存在しない患者に認められる動・静脈血栓症のなかでも最も頻度が高いものとして位置づけられている。また最近では抗カルジオリピン抗体の存在と動脈硬化の関連も指摘されている。 これまでのin vitroおよびin vivoの研究により、抗リン脂質抗体症候群では,β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体をはじめとする一群の自己抗体が血管内皮細胞や単球系細胞などを刺激し、凝固反応のイニシエーターとなる組織因子(TF)を細胞表面に発現し凝固系を活性化することにより,易血栓性が誘導されるということを明らかにしてきた。さらに、最近、我々は、抗β2-GPIモノクローナル抗体や抗プロトロンビンモノクローナル抗体、または抗リン脂質抗体症候群患者から分離した抗リン脂質抗体を含むサンプルを用いて、血管内皮細胞・単球・マクロファージ細胞株に反応させ、P38MAPK,NF-κBの活性化を介して、組織因子の発現が起きることを明らかにした。 本研究では、抗β2-GPI抗体と結合する細胞表面分子の同定を行い,受容体,共役分子などの機能について解析を行う。細胞表面よりp38リン酸化までのさらなる経路について,ウエスタンブロッティング法などにより解析を行った。さらに、P38リン酸化後のTF発現までの経路について,yeast two-hybrid法、ゲルシフト法などを用いて解析を行い、抗リン脂質抗体の病原性<血栓形成機序>を分子生物学的に解明した。本研究の学術的な特色は"抗リン脂質抗体(β2-GPI依存性抗カルジオリピン抗体や抗プロトロンビン抗体)が血管内皮細胞や単球系細胞を刺激して活性化する"という研究者らの発見に基づいていることである。抗リン脂質抗体症候群患者由来のモノクローナル抗β2-GPI抗体は、培養内皮細胞に接着因子(ICAM-1、VCAM-1、E-セレクチン)の発現を誘導する。さらにモノクローナル抗β2-GPI抗体は、単球や内皮細胞にも外因系凝固反応のトリガーであるTFのmRNAや蛋白を誘導する。これらの結果は、抗体と単球や内皮細胞のinteractionが血栓症発症に大きく関与していることを示唆した。
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Research Products
(21 results)