2005 Fiscal Year Annual Research Report
肝胆膵の発生・分化の分子機構の解明とその障害による小児疾患の病態解析
Project/Area Number |
17390296
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
須磨崎 亮 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教授 (40163050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 陽 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (00159146)
有波 忠雄 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (10212648)
島野 仁 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (20251241)
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Keywords | アラジール症候群 / 胆管 / 膵臓 / Hes1 / 遺伝子欠損マウス / 体性幹細胞 / 分化 / 発生 |
Research Abstract |
膵臓と胆管はいずれも前腸上皮に存在する前駆細胞に由来するが、器官分化の分子機構は不明である。我々はNotchシグナルの胆管系と膵臓の器官分化における意義を検討した。【方法】Hes1欠損マウスと過剰発現マウス(膵臓幹細胞や胆管原基に発現する転写因子Pdx1のプロモーター制御下に、Hes1とEGFPを発現するトランスジェニックマウス)を作成し、膵臓と胆管の発生過程を解析した。【結果】Hes1欠損マウスの胆管発生では、胆管芽は発生するが、総胆管や胆嚢は形成されず、胆管上皮は管腔構造をとらずに、内分泌や外分泌組織を有する膵臓様組織に分化した。胆管系と膵臓の原基は共にPdx1陽性で相互に可塑性に富んでいるが、胆管上皮ではHes1が持続的に発現して膵臓化プログラムを抑制することにより管腔構造が維持されることが判明した。一方、Hes1過剰発現マウスの膵臓では膵管のみが形成され、膵実質細胞は全く発生しなかった。膵管の上皮細胞では未熟性を示すマーカー(Pdx1,Glut2,βカテニン)が検出されるので、Hes1の過剰発現により膵臓幹細胞の分化・成熟が停止し、未分化能を維持したままの細胞が膵管にとどまった状態で出生したものと考えられる。【考察と結論】本研究により、系統発生的に近縁な胆管と膵管の原基には共に膵臓実質細胞への分化能を有する幹細胞が分布しているが、Hes1の時間・空間的な発現レベルの制御によって膵臓と胆管系の器官分化が可能になることが判明した。Hes1は神経細胞や膵臓細胞の分化を誘導するbHLH型転写因子を抑制するリプレッサーとして作用する。この機能が胆管系と膵臓の器管分化を可能にする分子基盤を担っていると考えられる。
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