Research Abstract |
昨年度までの本研究成果により,胎生15-16日のマウス胎仔肝から樹立されたストローマ細胞上で,マウス胎仔繊維芽細胞との共培養により維持された未分化なヒトES細胞コロニーを共培養すると,培養数日後からヒトES細胞コロニー中のES細胞は分化し始め,培養10-18日頃には,多能性造血前駆細胞細胞が産生されることが確認された。しかし,マウス胎仔肝由来ストローマ細胞とウシ胎仔血清に依存した分化誘導法であるため,産生された多能性造血前駆細胞をそのまま臨床応用することは困難と考えられた。 この問題を解決するために,マウス胎仔肝由来ストローマ細胞の代替細胞を,ウシ胎仔血清非依存的に樹立することを計画した。そこで,我々は,ヒトES細胞自身から,種々のヒト由来成分(ヒト血清,ヒト血漿,ヒト血小板溶解液)を用いてストローマ細胞に分化誘導することを試みた。その結果,5%ヒト血小板溶解液を含む培養液を用いることにより,ウシ胎仔血清非依存的に,ヒトES細胞からストローマ細胞を樹立することに成功した。 5%ヒト血小板溶解液を含む培養液を用いて,ヒトES細胞コロニーをゼラチンコートプレートに播種した。週2回培養液を交換し,1〜2週毎に継代培養した。その結果,数回の継代培養により,ヒトES細胞からストローマ細胞を樹立することができた。樹立されたストローマ細胞は,フローサイトメトリーによる表面抗原の解析では,CD105,CD166陽性,CD45,CD34,CD14陰性の,均一な細胞集団であった。今後,このヒトES細胞由来ストローマ細胞が,マウス胎仔肝由来ストローマ細胞と同等の造血支持能を有しているかいなかを検討することにより,臨床応用可能なヒト造血幹細胞の産生に寄与したいと考えている。
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