2005 Fiscal Year Annual Research Report
生殖免疫と腫瘍免疫の対比-妊娠維持機構からみた腫瘍免疫学への新たな提言-
Project/Area Number |
17390447
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
齋藤 滋 富山大学, 医学部, 教授 (30175351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 正利 富山大学, 附属病院, 助教授 (90242502)
中村 隆文 富山大学, 医学部, 助教授 (20303969)
日高 隆雄 富山大学, 附属病院, 講師 (70283083)
佐々木 泰 富山大学, 附属病院, 助手 (60324050)
宮崎 聡美 富山大学, 医学部, 助手 (90361956)
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Keywords | 妊娠 / 癌 / 免疫 / トレランス / 制御性T細胞 / IDO |
Research Abstract |
異物である胎児を許容するため、妊娠母体は種々の免疫学的エスケープ機構を有している。一方、癌細胞が宿主免疫から免れる過程において、胎児・胎盤系が母体免疫からエスケープする機序を利用していることも明らかになっている。本研究では妊娠免疫と癌免疫を対比させ、着床不全、流産、妊娠高血圧症候群などの治療の糸口を探るのみならず、腫瘍免疫の立場から新たな治療戦略を立てることを目的とした。初年度において、妊娠時では制御性T細胞が脱落膜中に増加しているが、習慣流産例では末梢血ならびに脱落膜において制御性T細胞が減少し、かつ胎児染色体正常流産例では着床部に制御性T細胞が皆無であることを認めた。また、これらの症例では母体免疫細胞の攻撃により絨毛外トロホブラストがアポトーシスは陥っていることを世界に先駆けて見い出した。動物実験においても、抗CD25抗体投与により制御性T細胞を減少させれば、アロ妊娠では流産が起こるが、syngeneicな系では流産は起こらなかった。以上より制御性T細胞が妊娠時に父系抗原に対しトレランスを誘導し、制御性T細胞が減少する拒絶が生じることが明らかとなった。IDOはトリプトファン異化酵素であり、免疫抑制に関与する。本研究で正常妊娠では、制御性T細胞に発現するCTLA-4を介して単球や樹状細胞のIDO発現が亢進し、流産ではこれらの反応性が減弱することも明らかとなった。 一方、癌の進展・制御を子宮頚癌症例で検討すると、制御性T細胞は微小浸潤癌になってから癌の進展部周辺に集簇すること、ならびにIDOは微小浸潤癌や浸潤癌の浸潤部の癌細胞に強発現することが明らかとなった(投稿準備中)。このような発現パターンは着床部における免疫環境と類似しており、生殖免疫と癌免疫の類似点を本年度に見い出すことができた。
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Research Products
(12 results)