2006 Fiscal Year Annual Research Report
敗血症性ショックにおけるPARsの臓器発現とその制御
Project/Area Number |
17390479
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丸藤 哲 北海道大学, 大学院医学研究科, 教授 (30125306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUBRINA Jesmin 北海道大学, 大学院医学研究科, 客員研究員 (60374261)
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Keywords | 敗血症 / エンドトキシン / プロテアーゼ活性型受容体 / 臓器不全 / 凝固 / 炎症 / 肺不全 / 呼吸不全 |
Research Abstract |
エンドトキシン静注ラット敗血症を作成した。このモデルでは敗血症性脳症、急性呼吸不全、急性肝不全、急性腎不全等が発症するが、平成17年から平成18年度の研究期間では急性呼吸不全(acute lung injury, ALI)と急性肝不全での研究を完成させて誌上公表することができた。 エンドトキシン静注に引き続いて臓器不全が発症するが、各臓器不全は病理組織学的所見に加えて、肺では血液ガス所見、肺湿/乾重量比、^<131>I albumin permeability indexを使用し、肝では総ビリルビンおよびAST/ALT値を使用して確認した。急性呼吸不全と急性肝不全の進行に伴い、protease-activated receptors(PARs)のisoform-PAR1,PAR2,PAR3,PAR4-の臓器発現を蛋白レベル(western blot)とmRNAレベル(RT-PCR)でエンドトキシン静注後1,3,6,10時間の時点で経時的に確認した。さらにこれらのisoformの臓器分布を免疫組織染色で同様に経時的に確認し半定量することができた。PARsの臓器発現は炎症性サイトカイン(TNF-alpha)および凝固線溶系分子であるtissue factor, tissue factor pathway inhibitor, Factor VIIa, Factor Xa, thrombin, fibrin, plasminogen activator inhibitor-1の発現と密接に連関していた。 次に臓器不全発現に炎症反応と凝固線溶反応の連関が関与していることを証明するために、急性肝不全モデルでPAR2 blocking peptide(PAR2BP)投与が臓器不全発症、炎症性サイトカイン(TNF-alpha)、凝固線溶系指標に与える影響を検討した。PAR2BP投与によりTNF-alphaは低下し凝固線溶系活性化が抑制され、引き続いて肝不全の改善がAST/ALT低下と組織学的検討により確認された。 現在エンドトキシン静注によりPARsが炎症性サイトカイン(TNF-alpha)および前述の凝固線溶系諸指標の変化を伴い脳組織および腎組織にも発現することを確認しており、特に後者ではPAR2 BP投与による腎糸球体フィブリン沈着抑制を認めることができた。以上の研究結果は敗血症性臓器不全の発現に炎症反応と凝固反応の密接な連関が関与することを証明するものであり、PAR2 BPによる炎症凝固線溶反応の抑制と臓器不全の改善は、新たな敗血症性臓器不全に対する治療戦略の可能性を強く示唆するものである。
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