2005 Fiscal Year Annual Research Report
エジプトのサッカラ・ギザ地域の地下埋葬室壁画の修復技術の研究
Project/Area Number |
17401001
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
吹田 浩 関西大学, 文学部, 教授 (80247890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西浦 忠輝 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 教授 (20099922)
西形 達明 関西大学, 工学部, 助教授 (40121892)
伊藤 淳志 関西大学, 工学部, 助教授 (50159860)
沢田 正昭 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20000490)
米田 文孝 関西大学, 文学部, 教授 (00298837)
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Keywords | エジプト / サッカラ / マスタバ / 壁画 / 文化財 / 世界遺産 / 修復 / ふのり |
Research Abstract |
古代エジプト最大の墓域サッカラ・ギザ地域に残る地下埋葬室壁画の修復技術を紀元前2360年ごろに遡るイドゥートのマスタバ墓を例にして開発するために以下の作業を行った。 壁画の修復技術の開発の前提として、事前調査の段階から残っている作業を進めた。事前調査の段階で、埋葬室内の床の堆積が、想定をこえて多かったために作業が遅れていたものである。堆積土のふるいがけ、シャフト部分の図面化、回収された壁画断片の写真撮影と番号付けによる登録である。 埋葬室とシャフトにある多くのクラックに対しては、主に目視による観察を行った。また、埋葬室のクラック数カ所に石膏をテープ状に張り付け、クラックの拡大の有無を確認できるようにした。 母岩の状態が悪いため、壁画をはぎ取り、新しいサポートに移す必要があるが、壁画の状態が一様でないため、母岩の分類とはぎ取り方法、はぎ取り手順を検討した。西壁のプラスターが、マスタバ発見以来もっとも剥落が進行しており、母岩、すさ、プラスターの劣化が深刻であった。はぎ取りの技術開発のための試行的はぎ取りは、西壁で行った。 はぎ取りには、閉鎖空間であることから有機溶剤をなるべく使わないようにすることが望ましいことから日本の伝統技術である布海苔とレーヨン紙の技術を用い、その有効性を確認した。はぎ取りに先立って、剥落した壁画片において、有機溶剤の塗布、布海苔による表打ちなどを行い、顔料の移動などの確認や適切な有機溶剤の濃度の確定などを行った。これを踏まえて、壁画のプラスターの一部において、布海苔によってレーヨン紙を貼付けて、試行的なはぎ取りを行った。 また、壁画の復元のために、剥落壁画片の本来の位置を確定する作業を進めている。
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