Research Abstract |
乾燥環境下にある高山において,温暖化がもたらす水資源環境の変動が,人間生態系(農牧業・自然植生・野生動物)に及ぼす影響を明らかにし,影響の将来予測を行い,将来の持続的自然資源の利用と管理への提言を行うことを目的として,(1)CORONA画像による水資源分布のマッピングの着手(澤柿、岩田),(2)タジキスタン(パミール高原)での予察調査(渡辺・水嶋),(3)パキスタン(カラコルム)での調査(全員),(4)関連文献アーカイブス構築,を行った。CORONA画像の解析は途中段階にあるが,水資源分布に関するローカルな違いを明らかにしつっあり,今後の野外調査に重要な基礎資料とするに充分な成果を得つつある。タジキスタンでの予察調査は6月に実施した。農業の点では少数民族であるワヒ族に焦点をあてることの意義や,野生動物保全を強調したエコツーリズムの導入の必要性と災害管理の重要性が理解できた。パキスタンにおいては,地震後の10月から11月に調査を行ったが,途中地域での政情不安定から,調査予定を早めて帰国せざるを得なかった。このため,予定していた調査がすべて完了したわけではないが,来年度に向けて,氷河,地形,災害,ツーリズム,農業などに関する記載を行うことができた。また,将来的に一般公開できるように,関連文献の収集を行っている。 平成18年3月30日に,国連大学会議場において,これまでのまとめと,来年度の計画に関する研究集会を開催する。この際,ドイツ・ゲッチンゲン大学から北海道大学に来ているカラコルムの研究者に講演を依頼し,今後の国際共同研究への展開を模索する。さらに同日,国連大学の研究者らと合同で研究集会を開き,パミールを中心とした持続的自然資源の管理・開発・利用,ならびに社会の持続性に関する議論を行う。成果の一部は平成18年3月28-29日に埼玉大学で行われる日本地理学会において口頭発表する。
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