2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17401013
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
新谷 忠彦 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90114800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ダニエルス クリスチャン 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30234553)
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Keywords | パラウン / プラン / ワ / タイ文化圏 / サルウィン文化圏 / メコン文化圏 / カチン / ラワン |
Research Abstract |
計画3年目にあたる本年度は言語調査担当の新谷が3回にわたってタイで調査を行い、パラウン語の各種方言(カロー、ナムチャーン、ムンパン、ロイコン、ムンクン)の調査を行うとともに、カチン系言語とタイ系言語の関係を探るべく、ラワン諸語の調査を行った。一方文化調査担当のダニエルスは中国徳宏においてタイ系言語で書かれた文献を精査し、タイ系民族とパラウンを中心とするモン・クメール系民族との接触関係を調査するとともに、関係諸民族の物質文化の調査を行った.こうした調査の結果次第に明らかになってきたことは、パラウン族は基本的にサルウィン文化圏に属するシャン族と行動をともにした民族であり、このことによってメコン文化圏に属するルー族と行動をともにしたプラン族、更にはタイ系民族と対立関係にあったワ族との違いが現れてきたものと考えられるようになってきた。同じ北方モン・クメール系に属するこの三つの民族の分布を眺めてみると、おおむね北から南へパラウン、ワ、プランの順になっている。この三種の民族の分化は、それぞれが接触したタイ系民族及び二つの大河文化圏の違いによるものと考えられる。また、パラウン語の音韻論の面で興味深い音節末に現れる閉鎖音を伴う鼻音が存在するのはどうやらサルウィン河を越えて東に移動したグループのようであり、パラウン族の移動の歴史を考える上で非常に貴重な資料が得られた。ラワン系言語の調杳によって、彼らの中にカチン社会に組み込まれているグループと組み込まれていないグループの存在が明らかになり、カチン社会がシャン社会にかなり類似した構造をもっていることも次第に明らかになりつつある。年度末にはシャン語で書かれた王統紀「センウィー王統紀」と「ウンポン・スィーポ王統紀」の翻訳を世界で初めて完成し出版した。
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