2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17401013
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
新谷 忠彦 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90114800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ダニエルス クリスチャン 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30234553)
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Keywords | パラウン語 / ワ語 / プラン語 / サルウィン河 / 無声音化 |
Research Abstract |
計画最終年度に当たる本年度は、言語調査担当の新谷がタイ王国北部、中国雲南省、ミャンマーで調査を行い、文化調査担当のダニエルスは中国雲南省で、相互に連携を取りつつ、それぞれ最終的な調査を行った。パラウン語についてはこれまでの調査で南部と北部では音韻変化に大きな違いがあること(南部では古来の有声音が無声音化しているのに対し、北部では無声音化することなく有声音のまま保存されていること)が分かっていたが、今回の調査では北部にありながら無声音化している方言が見つかり、この方言を調査できた意義は大きい。パラウンは基本的にはサルウィン河の西に居住し、東の方に居住するのは南部地域に比較的新しく移住してきた人のみであったが、北部に位置するこの方言はサルウィン河の東に位置していることから、音韻変化の上で起こった他の北部方言との違いは、移動及び異民族との接触によるものと考えられる。同じ系統のワ語及びプラン語はサルウィンの東に位置していると同時に全ての方言で無声音化現象が見られる。このような考えは文化調査の結果によってもある程度裏付けられているが、どのような経路で移動し、どのような異民族と接触したのかなどの細部については、今後の資料整理及び補充調査によって次第に明らかになってくるはずである。又、南部のパラウンは通常ビルマ語能力を持たず、タイ系言語をリンガフランカとしているが、カローのパラウンに限ってはビルマ語能力を持ち、ビルマ語からの借用語も多い。このように、パラウンの全体的な分布状況の中で「孤島」と思えるような地域がこれまでの調査で2箇所見付かっており、こうした「異常」の理由は言語・文化調査によってのみ解明できるものと考えられる。
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Research Products
(5 results)