2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国に現存する石笵鋳造技術の調査をもとにした古代石笵鋳造技術の復原
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17401029
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
中井 一夫 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第1課, 課長 (40250360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 勝 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (10029225)
菅谷 文則 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (10275175)
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
宮原 晋一 奈良県立橿原考古学研究所, 調査研究部, 研究員 (90250373)
清水 康二 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第2課, 主任研究員 (90250381)
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Keywords | 石笵 / 鋳造 / 青銅器 / 考古学 |
Research Abstract |
共同研究者の李氏の情報により昨年度その存在を確認した、四川省木里県俄亜における石笵を用いた鉄製犁の鋳造作業過程を8月2目から8月14日にかけて行った。昨年度の事前調査で急増を開始する日が占いにより決定していたからである。目的地の俄亜地域は四川省と雲南省の境にあり、県都の木里県から馬で3〜4日かかるという僻地である。一方雲南省麗江市からは車で1日馬と徒歩で2日の行程で目的の鋳造作業が行われるこの地域の中心である大村に行けるので、このルートで調査に入ることとなった。麗江で調査参加者が落ち合い、調査準備を整え、8月5目に自動車で四川省境にある漆樹湾村に到着。6日馬で3850mの峠を越えて俄亜地区に入る。最初の村俄日村で宿泊。7日大村に徒歩で到着。8日鋳造準備作業から調査を行う。鞴の手入れ。石笵を加熱して脱水。離型剤の作成。溶解炉の修理など。9日鋳造開始に際して、村の東巴による祭祀がある。鉄素材はかって製鉄を行っていた山に落ちていたというもの。溶解に使用する燃料は松炭。鉄の溶解が始まると暖めていた石笵の組み立てを行う。さほど熱くはないが素手では持てない。溶解は約1時間かかり石笵は常温に近い温度まで冷たくなっている。溶解炉は上下二段構造となっているが、その炉底の構造に見るべきものがある。炉底の構造はフライパンのように取っ手がついており溶解が完了するとこの取っ手に棒を差し込み柄杓状態とする。炉の上部を除去するとこの棒をつかんで柄杓のようにして鋳型に溶けた鉄を流し込む。一回の鋳造で2点から3点の製品を作る。型ばらしは鋳造終了後数分で行う。まだ赤熱している部分が残っていた。石笵から取り出された製品は炉の周辺にある灰の中に埋め込まれる。調査期間中鋳造作業は4回行われた。8月16日に麗江に帰り周辺部での鋳造事情を調べる。古い鋳造形態は痕跡すら残っていないように思えたが、帰国寸前の8月17日に土製鋳型を使った古い鋳造工房があるとの情報を得、訪ねる。送風はモーターになっていたが、木を台にしてこの上に土で鋳型を作成していた。溶解炉の規模も大きく、一度に10個ほどの鋳造を行うとのことであった。
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