2006 Fiscal Year Annual Research Report
先住民の文化顕示における土着性の主張と植民国家の変容
Project/Area Number |
17401037
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 好信 九州大学, 大学院比較社会文化研究院, 教授 (60203808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 光穂 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (40211718)
江戸 淳子 杏林大学, 外国語学部, 教授 (00203638)
生月 亘 関西外国語大学, 短期大学部, 助教授 (90300285)
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Keywords | 先住民 / リベラル民主主義国家 / 和平合意 / ニューカレドニア / グアテマラ / エクアドル / 市民権 / 政治的アイデンティティ |
Research Abstract |
本年度は研究計画の中間地点にあたるが、平成18年6月に、それぞれの研究課題のなかで、「経済要因や社会要因により国家が大きく変動するとき、先住民文化運動において重要な要素である土着性は、どのように再定義されるのか」という本研究の中心的課題を確認することから始めた。夏季に実施した中米(グアテマラ)と南米(エクアドル)を調査対象としている代表者と分担者が行った調査から、次のような報告があった。(1)グアテマラ先住民の集団的アイデンティティは、国家が規定する法や超国家的概念である人権という考え方をとおして--それに相反するのではなく--提示されている。反面、国家は先住民を国家遺産の象徴として扱い、先住民の集団的権利を積極的に認めようとしていない。国家が先住民を市民として包括するときの条件が、先住民性を国家に委ねることを要求し、先住民はまさにそれを拒否しつつも、国家への参加を望むというように、相互交渉はいまだに解決を見ないまま継続している。(2)エクアドルは、グアテマラに比較すると、先住民の自立が確立している印象を与える。エクアドルのバイリンガル教育は、先住民の土着性を放棄するかたちで進行しているため、自立よりも同化がその結果として生まれうるのではないかという疑問が提示された。これらラテンアメリカの事例と対比して、ニューカレドニアを調査した分担者は、カナクが文化的アイデンティティを表現する方法がフランスでの芸術運動を取り入れる方向で展開していることを検証した。土着性は、ますますその定義が難しくなっている。来年度の調査では、先住民の政治的アイデンティティが国家の諸制度との具体的関係においていかに形成されるかを調査する。
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Research Products
(4 results)