2007 Fiscal Year Annual Research Report
先住民の文化顕示における土着性の主張と植民国家の変容
Project/Area Number |
17401037
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 好信 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (60203808)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
狐崎 知己 専修大学, 経済学部, 教授 (70234747)
池田 光穂 大阪大学, コミュニケーション・デザインセンター, 教授 (40211718)
江戸 淳子 杏林大学, 外国語学部, 教授 (00203638)
生月 亘 関西外国語大学, 短期大学, 准教授 (90300285)
|
Keywords | 文化顕示 / 新自由主義経済 / 文化的アイデンティティ / 先住民の政治参加 / 多文化主義(ラテンアメリカ) / ニューカレドニア / グアテマラ / エクアドル |
Research Abstract |
本年度は、先住民運動の文化顕示が起きている社会の比較をおこなうことを目的としていた。まず、江戸はヌメアの文化センターにおける「カナク文化」の表象を調査した。ここでの表彰は市民権や土地返還要求が喧しいニューカレドニア社会とどのように呼応するかに着目している。生月は、エクアドル・コトパクシ地方・ワイヤマ村などで展開している二言語教育の中で「間文化性」という概念がいかに機能しているかを調査した。最後に、池田、狐崎と太田は、大統領選挙がおこなわれたグアテマラで、先住民の政治参加と文化的主張との関連を調査した。狐崎は、メンチュウ候補に代表される国家レベルでの先住民政治と文化的主張との関係を、また池田と太田は、村落レベル-市町村長、さらに市町村議員候補たち-での関係を調査した。地域的偏差を考慮し、池田はマム語系村落で、太田はカクチケル語系村落で、それぞれ調査を分担した。グアテマラでの調査で判明したのは、村落レベルでの先住民候たちの政治主張は先住民文化に根ざした修辞や概念に訴えている一方で、国家レベルでは言語集団間の差異は依然として大きく、同様の訴えは、汎マヤではなく、候補者-具体的には、「メンチュウはキチェ人だ」というように-は、全国的アピールを持ち得ていない。つまり、先住民たちは自らの支持母体を文化をとおして動員することに失敗している。ニューカレドニアでは、文化センターがカナク・アイデンティティ構築に寄与することが判明したものの、いまだに政治の重要案件である土地回復問題との接点が不透明である。エクアドルの事例からは、文化顕示が「間文化性という国家プロジェクト」に回収されてしまった状況が浮上した。文化、政治、そして新自由主義経済が世界規模で広がる現在、先住民たちにとって文化顕示は多文化主義による回収と政治的空間獲得のための手段という「諸刃の刃」であることが明らかになった。
|
Research Products
(9 results)