2006 Fiscal Year Annual Research Report
英国における非営利・協同センターの財務構造に関する学術調査
Project/Area Number |
17402021
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三上 和彦 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (30229653)
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Keywords | 英国非営利・協同セクター / 医療 / 企業形態 / メンバーシップ市場 / 資本調達 / 住宅協同組合 |
Research Abstract |
1.実証研究 昨年8月末より英国に滞在し、同国の非営利・協同セクターに関する調査を進めている。 第一に、昨年度からはじめた英国の医療分野における企業形態の調査を進めた。英国の医療制度は、MSと呼ばれる国営の医療制度と、一般に「プライベート」と呼ばれている営利企業による診療に大別される。NHSは税金で運営されており、患者は無料で診療を受けられる。GPと呼ばれる一般医の診療は数日中に受けられるのが普通であるが、専門医の診療を受けるには2週間以上の待ち時間があるのが一般的であり、その際の検査や投薬もかなり節約されたものになっている。近年、財政的理由から政府より経費節減を要求され続けており、救急医療の統合など地域における医療サービスの低減につながっている。一方、プライベート診療では、1回あたり2万円から3万5千円程度の費用がかかる。一両日中に専門医の診療を受けることができ、検査や投薬も迅速に行われる。こうしたプライベート医療を供給する病院の経営主体は上場株式会社であり、全般的に経営状態は良好である。 第二に、現在、住宅協同組合の調査を行っている。住宅協同組合とは、基本的には、住人が住宅に関する消費者協同組合を結成し、住宅の建設、維持・管理を行う仕組みである。そこにおける資金調達の方法と財・サービスの取引形態は、私の想定する消費者協同組合とメンバーシップ市場に基づく経済システムの理論にとって格好の調査対象であるのであるが、現実にはいくつか調査上の問題がある。そのもっとも大きな問題は、英国では、住宅協同組合は、貧困層に対する福祉政策として進展してきたという歴史があり、そのため伝統的に政府の関与が深く、純粋に自由な市場取引の結果として現実があるわけではない、という点である。この問題をいかに取り扱うかが今後の課題である。 2.理論研究 昨年11月に、滞在先のロンドン大学のセミナーにおいて、研究論文の報告を行った。そこで出た問題を検討し、近く理論部分を書き直した改訂稿を完成させるつもりである。今後さらに、住宅協同組合の調査結果を踏まえ、これを内容の一節として加筆した上で、7月までに論文を完成させたいと考えている。論文は、ロンドン大学のワーキング・ペーパーとして公表する予定である。
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