2007 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける石造文化財の石材並びに石材劣化に関する研究
Project/Area Number |
17403001
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
内田 悦生 Waseda University, 理工学術院, 教授 (40185020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 孝教 総合地球環境学研究所, 教授 (20155782)
下田 一太 早稲田大学, 理工学術院, 客員講師(非常勤扱い) (40386719)
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Keywords | 東南アジア / アンコール遺跡 / チャンパ遺跡 / 中部ジャワ遺跡 / クメール遺跡 / 石材 / レンガ材 / 石造文化財 |
Research Abstract |
本年度では、主としてカンボジアのアンコール遺跡、インドネシアの中部ジャワ遺跡及びベトナムのミソン遺跡の石材調査を実施した。 アンコール遺跡では、バイヨン内回廊の浅浮き彫りの保存を目的として、砂岩材の含水率の1カ月毎の測定及び吸水率測定を行った。吸水率測定からは、石材背後から水がしみこむような場所では、石材表面に塩類やシリカ分が沈積し、吸水率が極端に低下していることが明らかになった。また、アンコール・ワット十字回廊を中心に顔料調査を行った。この結果、赤色顔料として鉛丹およびベンガラが使用されていることが明らかになるとともに、白色顔料として鉛白、コチュナイト、ラウリオナイトに加え、シュウ酸塩鉱物や炭酸塩鉱物が使用されていることが明らかとなった。さらに、プノンペンやバッタンバン郊外のアンコール期の遺跡の調査を行い、これらの遺跡ではアンコール遺跡とは異なり石英質砂岩が使用されており、これは供給源との距離に支配されていることが明らかとなった。 インドネシアのジャワ遺跡に関しては石材供給源を探るべく、周辺の火山及び河川の石材調査を実施した。その結果、中心的な存在であるボロブドゥール遺跡群およびプランバナン遺跡群の石材はムラピ山から直接運ばれてきたものであり、前期と後期で石切り場が変化していることが明らかとなった。 ミソン遺跡は、今年度初めて調査した遺跡である。基本的にレンガ造であるが、開口部とB1遺跡には砂岩が使用されている。この砂岩は、アンコール遺跡に使用されている砂岩と同じであり、地質図から判断しておそらく遺跡周辺から供給されたと思われる。B1遺跡における砂岩の使用法はアンコール遺跡の同時期であるバプーオン期のものと同じであり、建造法における交流がアンコール遺跡とミソン遺跡との間にあったことが明らかになった。
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Research Products
(3 results)