Research Abstract |
本研究では,東アジアにおける甲虫類の系統地理解析を行なうために,海外調査を行ない,得られた甲虫類の試料について,分子系統解析を行なっている.本年度は,2007年6月17〜30日に,中国陝西省・四川省における調査を行ない,オサムシ類,ネクイハムシ類を採集した(曽田).また,7月24日〜8月2日に,バングラディシュにおいてハンミョウ類の調査を行なった(堀).また,7月には北海道においてネクイハムシ類の調査を行なった. ネクイハムシ類については,これまでの系統地理解析をまとめ,論文として発表した.まず,日本国内でのミズクサハムシ属5種のミトコンドリアCOI遺伝子の塩基配列データを解析して,国内での種ごとの地理的分散・分断を明らかにし,化石記録を参照して地理的分化年代を推定した.また,ミズクサハムシ属のうち,鮮新世から日本列島に分布し,地理的分化が最も著しいオオミズクサハムシについて,その産卵管形態の地理的変異を解析した.さらに,ヨーロッパ,北米を含めた全北区のミズクサハムシ属全体について,分子系統解析を行い,この属の分化の歴史を推定した.その結果,始新世後期に北米-アジアとヨーロッパの間で系統分化が起こり,その後中新世後期までの間,北米とアジアの間で複数回の分散・分断が起こったことが推定された. オサムシ類については,日本のクロナガオサムシ亜属の種系統樹を核遺伝子の解析によって作成し,ミトコンドリアの種間浸透について解明した.また,オオオサムシ亜属に関しては,ヤマトオサムシの系統地理解析を報告したほか,同所的種間での浸透交雑が,交尾器・体サイズの差が大きいほど起こりにくいことを報告し,本亜属における機会的生殖隔離機構の有効性を示した.
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