Research Abstract |
本年度の活動は,大きくは分けると,(1)極東域での標本採集調査,(2)日本魚類学会(10月5日〜8日)でのカジカ類の国際シンポジウムと写真展「写真で見るカジカ類の多様性」,(3)ロシア科学アカデミー海洋生物学研究所でのワークショップ,(4)昨年度までに採集したカジカ類の生殖器官の組織観察,の4つになる。 (1)10月25日〜11月11日までの2週間,ロシア沿海州の海洋保護区とポポフ島に潜水を中心とした調査を実施した。12日間で65時間の潜水調査などで,24種250個体余りのカジカ類標本を採集した。初記録種(ヒメフタスジカジカ),126年ぶりの発見と見られる種(Alcichthys elongatus)も含んでいた。(2)ロシアから1名,アメリカから2名の演者を招待し,あわせて13名が発表した。100名を越す視聴者が参加し非常に活発な議論ができた。また,アメリカの研究者とは,今後の調査計画についても綿密な議論ができた。写真展は,学会後,北大総合博物館でも10月10日〜11月4日まで開催し,一般にも研究成果の一部を公開した。(3)ロシアでの調査に引き続きウラジオストクでアメリカの研究者も含め3か国で開催した。北太平洋沿岸生態系とその鍵種である魚類の生態に関する研究課題を整理できた。(4)交尾型カジカの進化過程を探る目的で,生態が未知種も含め精巣および精子頭部の構造を種間比較し,交尾種と非交尾種の相違について,重要な事項を何点か整理できた。特に,精子を形成する精巣実態の構造と精子頭部の形状に大きな変異が見つかり,系統と機能との観点から考察した研究成果を国際シンポジウムで発表した。
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