Research Abstract |
心の科学に関わる学術領域として認知科学と知識資源学をとりあげ,学術用語と学術概念の特徴を分析した.得られた特徴を適切に反映できるような,学術領域オントロジーの設計方針を提案した. 一般的に知識の定義には,どのような立場から,どのような歴史を背負い,どのような理論を背景とするかという問題が,必ずといっていいほど侵入してくる(視点依存性,理論負荷性問題).特に,心的概念を多く抱える認知科学,心理学においてはこれが顕著である.形成途上にある領域の代表としてとりあげた知識資源学でも同様であることを見出した.心に関わる概念それぞれに単一の普遍的定義を与えることはほとんど不可能である一方,理論的立場を固定するならば,実用的な定義を与えることは十分に可能である場合が多い.ある研究論文なり研究発表なりがどのような理論的立場,社会的背景をもっているかは,一般に明示的には記述されていないので,その適切な推測のためには,十分な専門知識が必要となる。こうした状況が問題となるのが,(i)研究者間,特に共有知識が異なる研究者間の学際的コミュニケーションであり,(ii)初学者における学習であることを,分析によって特定した. これらを,学際性ギャップ問題,熟達性ギャップ問題と名付け,どちらも知識の局所性の問題に還元できること,さらに実用的な学術領域オントロジーを設計するための指針として用いることができることを見出した.そして,どちらの問題も,著者/研究グループ/学派/分野に属する局所的な定義の使用から派生する問題と考え,オントロジーの実装上ではXML文書のDTDスキーマを用いて反映させる方法を提案した.
|