2005 Fiscal Year Annual Research Report
計算論的関連性理論に基づく条件文理解過程の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
17500176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
松井 理直 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 助教授 (00273714)
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Keywords | 関連生理論 / 計算論 / 論理 / 意味 / 制約 / 条件付き確率 / 様相性 / 言語 |
Research Abstract |
本研究は、 (i)推論・思考の言語的表現である「条件文」の理解過程を、心理実験により検証し、得られた性質を言語学の面から理論化する。 (ii)日常的な推論がどのような形で行われているのか、論理と日常推論の関係はどのようなものかを探求する。 ことを最終的な研究目標に置いたものである。現在、研究の作業仮説として、日常的な推論は論理とは異なった、情報間の「関連性」から計算されるものであること、しかし「一定の手続き」を知っていれば、関連性の計算から数学的な論理と等価な結果を導出できること、の2点を考えている。本年度は、このうち、後者の点について重点的に研究を行った。その結果、以下の暫定的な結論を得た。 1.我々の日常的な思考・推論過程は、命題論理では区別されない多様性が存在する。これはWason選択課題などの実験からも見て取れると同時に、その実験結果は「〜かもしれない」「〜にちがいない」という言語表現の様相性を組み入れることで、全体的な傾向を説明できる。 2.こうした様相性を組み込んだ思考過程の数学的な表現手段として、確率論に基づく「計算論的関連性理論」の枠組みを構築した。これは条件付き確率に基づく明示的な数式によって表され、パラメータをある一定の値に固定した場合には、統計学でいう回帰直線や相関係数と関係を持つ数式である。 3.さらに、この数式のパラメータをコンテクストに依存しない数値に固定した場合、数学的な論理でいう含意や同値と同一の結果を導き出せる。ただし、これは計算の結果が同一になるというに過ぎず、その「計算過程」は異なったものである。換言するならば、日常的な思考推論では、数学的な論理は直接用いられておらず、関連性の計算の特殊な一パターンとして、結果的に数学的論理と同一の行動が可能になるということを示唆するものである。 次年度は、本年度で得られた上記の結果をさらに深め、かつ言語表現との関係をより深く追求する計画である。
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Research Products
(3 results)