2005 Fiscal Year Annual Research Report
多量の粘液様基質の沈着を示す新たな小児グリオーマ腫瘍型の確立
Project/Area Number |
17500220
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
平戸 純子 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60208832)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 誠 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40344915)
|
Keywords | グリオーマ / 小児 / 粘液様基質 / 臨床病理学 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
所属施設で手術された脳腫瘍症例とコンサルテーションに寄せられた症例から、多量の粘液様基質の沈着を示す神経上皮性腫瘍を8例抽出し、臨床病理学的に検討した。 年齢は1歳から16歳までの小児7例、さらに若年成人例として24歳の症例1例を含めた。8例中6例が9歳以下で、男女比は1:1.7であった。発生部位は、全例テント上部で、前頭葉と側頭葉に多い。既往にALLがある症例を3例含んでおり、頭部放射線照射が行われてから、6年から17年後に脳腫瘍が生じている。 組織学的には、腫瘍細胞は網状、胞巣状の増殖パターンを示し、血管中心性に増殖する傾向が認められた。腫瘍細胞の形態については、腫瘍細胞の多くが未熟な形態を示した症例が1例あった。腫瘍細胞の要素のみを見れば、現在の分類では、peripheral neuroectodermal tumor(PNET)に相当するが、PNETでこのようなmyxoidの腫瘍は、検索した範囲では報告されていない。また、未熟な細胞からなる領域とともにastrocyteへの分化が明らかな領域がみられる症例が3例あった。他の2例は腫瘍細胞の核異型が明瞭で、核分裂像が多数出現しており、細胞形態としてはhigh grade astrocytomaで増殖能もMIB-1陽性率で30%を超えていた。他2例は近年pilocytic astrocytomaから亜分類されたpilomyxoid astrocytomaと核異型が軽度で増殖能も低い分類不能な腫瘍であった。 多量の粘液様基質を伴うグリオーマは、悪性度が高いものが多く、未熟な形態を示す腫瘍細胞が構成要素となることが明らかとなった。一部はglioblastomaの亜型とみなされる症例もあった。8例中3例に頭部照射の既往があることは、放射線誘発腫瘍との関連性を考えるうえで興味深い。 今後、病理診断用検体で検索可能なCISH法やFISH法を用いて遺伝子異常の解析を行い、免疫組織化学法で粘液様基質の性質を解明することを中心に研究を進めたい。
|