2005 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質神経細胞が移動する過程で軸索伸展と移動の方向を知る分子機構の解明
Project/Area Number |
17500237
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田畑 秀典 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80301761)
|
Keywords | 神経科学 / 脳 / 発生 / 分化 / 細胞間相互作用 / 神経回路 |
Research Abstract |
申請者らは、哺乳類大脳皮質発生過程において脳室帯で誕生した神経細胞の90%以上は脳室下帯を中間目的地として移動し(Phase I)、その場で留まって接線方向に突起を伸ばす多極性細胞となった後(Phase II)、双極性細胞へと変化し、放射状グリアを足場として移動すること(Phase III)を見出した。しかし、神経細胞が移動過程で多極性細胞となる理由は明らかになっていない。申請者らは、Phase IIにおいて軸索の伸展が開始されること、その後、放射方向の極性を回復し、移動を再開することから、多極性細胞には軸索伸展の方向決定と、移動再開時における移動方向決定という2つの大きな役割があるという仮説に至った。その分子的実体を捉えることは、この仮説を実証する最も有効な方法と考え、外界の情報を受けるための受容体タンパク質に注目したスクリーニングを開始した。研究開始時に、PCRベースの網羅的遺伝子発現プロファイリング法であるHiCEP法により292種類の分子、また多極性細胞を多く含む集団からのシグナルシークエンストラップ法(SST法)により103種類のタンパク質を同定していたが、17年度はさらにSSTによるスクリーニングを行い、さらに73種類の候補遺伝子を追加した。さらに17年度はこれらの候補分子に関して、大規模in situ hybridizationを行い、19種類の遺伝子に関して多極性細胞の存在するSVZに発現が確認された。興味深いことに、これらの中には、すでに軸索ガイダンスに関与することが知られている分子が多数含まれていた。各候補分子に対するshort interference RNA (siRNA)ベクターと、さらにいくつかの候補分子に関してはドミナントネガティブ変異体を発現するベクターを構築し、移動と軸索の方向性に関する機能解析を開始した。
|