2006 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質神経細胞が移動する過程で軸索伸展と移動の方向を知る分子機構の解明
Project/Area Number |
17500237
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田畑 秀典 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80301761)
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Keywords | 神経科学 / 脳 / 発生 / 分化 / 細胞間相互作用 / 神経回路 |
Research Abstract |
我々のこれまでの研究から、皮質神経細胞の大部分は多極性細胞として脳室下帯(SVZ)に一過性に留まる多段階的な移動過程を示すことが明らかとなった。しかし、多極性細胞を経ることの意義は、いまだ明らかではない。多極性細胞は、移動方向と直行する接線方向に軸索様の突起を伸ばすことから、周囲の徴小環境を感知し、軸索伸展方向を決定する時期であると考えられた。このような観点から、SVZに発現する受容体タンパク質をスクリーニングし、19種類の遺伝子を同定した。18年度は、その内の1つであるRobo2に関して重点的な解析を行った。In situhybridization法では、Robo2 mRNAは妊娠15.5(E15.5)においてはSVZから中間帯(IZ)に、E16.5以降はこれらに加えて皮質板(CP)に発現が広がることが観察された。一方、Robo2タンパク質の免疫染色による観察では、E16.5でもCPに発現が認められず、IZの軸索束が非常に強く染色された。SVZにおいては、Robo2タンパク質は、多極性細胞の周囲を縁取るように局在しており、多極性細胞が実際にRobo2タンパク質を発現していることを示唆した。また、mRNAとタンパク質の分布の違いから、移動神経細胞がCPに侵入するころには、Robo2タンパク質は軸索へトランスポートされることが示唆された。この時期、Robo2の反発性リガンドであるSlitlはCPの深層に発現していることから、以下の作業仮説が考えられた。Robo2は、多極性細胞の時期には細胞体全体に発現していて、Slit1からの反発性シグナルによってCPへの進入が妨げられている。多極性細胞において軸索が確立すると、Robo2は軸索ヘトランスポートされ、細胞体から消失し、CP内への進入が可能になる。電気穿孔法により、Robo2を強制発現させると移動が障害され、この仮説と矛盾しない。
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