2007 Fiscal Year Annual Research Report
幕末関東農村における剣術流派の存在形態に関する基礎的研究
Project/Area Number |
17500407
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
数馬 広二 Kogakuin University, 工学部, 准教授 (30204407)
|
Keywords | 上野国甘楽郡 / 18世樋口定 / 七日市藩 / 小幡藩 / 神戸金左衛門 / 太平山神社 / 剣術奉納額 / 神道無念流 |
Research Abstract |
本研究は、江戸幕末期、関東農村で農民の身体文化の一部と位置づけられる剣術の普及とその意義を明らかにすることを目的とする。とくに、上野国(馬庭念流)・下野国(神道無念流)農村における武術流派運営の実態を調査した。(1)上野国甘楽郡の馬庭念流門人調査上野国甘楽郡内の馬庭念流門人は78村域。門人は七日市藩士(前田家)、小幡藩士(織田家松平家)、「関守」「僧」「医師」「農民」などであった。とくに「砥石」「蒟蒻」信州米、上州絹の商取引で栄えた宿場町(下仁田町・一宮町・富岡町)に門人が多く確認された。また門人であった関守・神戸家、市川家は信濃国佐久郡への新田開発や藩への献金も行っており、馬庭念流が信濃国への門人を拡大する上で大きな役割を果たしたと考えられる。また馬庭念流が伊勢神宮へ姓名額を奉納した件では、18世樋口十郎右衛門定伊が七日市藩士として中山道の交通上の特権に恵まれ、滞りなく行われたことがわかった。このことは近世剣術流派の一事業である奉額活動が藩によって支えられた事実を示す初めての研究であった。(2)下野国太平山神社の奉納額の調査栃木県大平町にある太平山神社に奉納された武術姓名額(倉庫に保管)について枚数、姓名などにつき調査を行い、的確な番号付けと再配置を行った。作業は5日間合計作業人足は26名となった。合計84枚の額のうち剣術は、神道無念流(文政6年・嘉永7年・慶慮丁卯年)の計3枚、弓術は日置流・大和流(明治28年)・奉納弓術会(明治35年)、砲術は、武衛流(慶応3年)、外記流(年代不明)であった。
|