Research Abstract |
大学陸上競技部に所属する中長距離選手12名(男子4名,女子8名)を対象に,1.75時間におよぶ夏季練習時の脱水による循環血漿量の変化に着目し,ヘマトクリット値(HCT)の変化量からみた脱水の程度の違いがフォンビルブランド因子(VWF)産生ならびに回復過程にどのように影響するか検討した.その結果、VWFの量的な変化を示すVWF抗原量は練習前値の79.2±6.6%に比し,練習直後に116.6±11.5%,1時間後に110.4±11.2%と有意に増加した.VWFの質的変化を示すVWF凝集能についても練習前値の87.4±6.2%に比し,練習量直後に133.3±9.8%,1時間後に126.9±10.7%と抗原量と同様に有意に増加することが認められた.一方,VWFを分解する酵素活性(ADAMTS13活性)は練習終了直後の77.2±4.3%から練習終了1時間後に67.2±3.9%と有意に低下する傾向がみられ,ADAMTS13抗原量は練習前値79.3±5.3%に比し,練習量直後に85.4士4.6%有意に増加し,練習終了直後から練習終了1時間後に80.8±4.6%と有意に低下した. 次に練習前,練習直後ならびに練習終了1時間後のHCTとVWF抗原量,VWF凝集能,ADAMTS13活性およびADAMTS13抗原量との関係についてみると,HCTとVWF抗原量との問に絶対値(p<0.05,r=0.39),変化量(p<0.05,r=0.45)とも有意な正の相関関係がみられ,とくに練習前から練習終了1時間後にかけてのHCTとVWF抗原量の変化量との間には高い相関関係が認められた(p<0.01,r=0.74).また,練習前から練習直後のHCTの変化量とVWF凝集能の変化量との間には正の有意な相関傾向がみられた(p=00.09,r=0.38).これらの結果は,HCTからみた脱水の程度の高いものほど,VWF抗原量ならびにVWF凝集能の高いことを示唆するものである.
|