Research Abstract |
わが国では,人口構造の高齢化と高齢者一人当たり医療費の増加により国民医療費は増大を続けてきた。今後も一層増大するものと推測される。公的医療保険の財政は悪化しており,その解消のために高齢者および働く世代の医療費自己負担や保険料が引き上げられ家計負担が重くなってきており,この傾向は今後も続くことが予想されている。 高齢者が必要なときに必要な医療サービスを受けられる体制の維持は不可欠であると同時に,高齢者および働く世代の家計の健全化を保つことも重要な課題である。それらの両立のためには,高齢者の健康の維持・増進を進め,健康水準を上げることが必要である。その実現のための方策のひとつとして,高齢者の健康維持・増進に有効な暮らし,生活環境,医療サービス供給システムの構築が挙げられる。 ところで,わが国の高齢者一人当たり医療費は,都道府県別,市町村別に見たときに格差が大きく,極めて高い地域がある一方で,極めて低い地域も存在する。その違いの実態と違いを生んでいる要因を明らかにすることにより,健康水準を左右する要因の解明がなされるものと推測される。そこで本研究では,公表されている資料および実態調査の実施により,全国および広島県内の地域別の高齢者一人当たり医療費と暮らし,生活環境,医療サービス供給システムの実態およびそれらの相互関係を分析することにより高齢者の健康維持・増進に有効な暮らし,生活環境,医療サービス供給システムを明らかにすることを目的としている。 本年度は,高齢者の暮らし,生活環境,健康や介護,公的医療保険・介護保険制度,生活経済,医療サービス供給システムに関する文献・資料を収集・検討し,専門家からの教示を受けたうえで,厚生労働省などにより公表されているデータを収集し用いて高齢者の暮らし,生活環境,医療サービス供給システムの実態について分析した。
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