2007 Fiscal Year Annual Research Report
生物資源(主として不凍タンパク質)の機能性発現とその応用開発に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
17500536
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三好 恵真子 Osaka University, 人間科学研究科, 准教授 (60294170)
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Keywords | 生物資源 / 不凍タンパク質 / 澱粉 / 微生物多糖 / レオロジー / ゲル / DSC / 老化抑制 |
Research Abstract |
低温環境に適応した微生物や動植物の場合、生物体自身の凝固点を環境温度より低下させて凍結を防止するために、「不凍タンパク質」を生体内に生産しており、その優れた機能特性は、生態系の自然循環の中に取り込まれる生物資源の有効利用の面からも、食品,医療分野をはじめ、物質生産,環境保全等の広範囲な応用開発が期待されている。 そこで本研究では、安全性や生産性を考慮してワカサギから不凍タンパク質を精製し、不凍タンパク質の諸物性および食品への添加の影響を多角的に究明して、新規食品添加物の創製など応用開発に直結した基礎的知見の提供を目指した。分析手段として、粘弾性解析システム,示差走査熱量測定計(DSC)およびクリープメーター物性試験システム等を用いることにより、多面的な比較検討を行った。 今年度は、これまで明らかにした不凍タンパク質が極めて低濃度(10μg/ml)で澱粉の老化抑制効果を発現する現象をより詳細に検討するために、性質の異なる各種澱粉を用いて比較したところ、不凍タンパク質と水との相互作用の影響が確認された。 また、不凍タンパク質の応用開発的面を充足させるために、昨年度に引き続き、微生物多糖類であるジェランガムへの添加を試み、ゾルーゲル転移に及ぼす影響やジェランガム分子とそれを取り巻く水に及ぼす不凍タンパク質の影響などを比較検討した。その結果、ジェランガムのレオロジー的・熱的性質に対しても極めて微量な不凍タンパク質の添加が効果を発揮し、その諸物性に顕著な影響を及ぼすことが示唆された。 これらの研究成果は、第55回レオロジー討論会等で報告し、また今年度刊行された学術論文にも一部加えた。また本研究の位置づけが、循環型社会構築における生物資源の有効利用であるため、今年度発行したいくつか学術論文や著書の中でも、これら研究の意義・展望について言及している。今年度が本プロジェクトの最終年度にあたるため、総合的成果を最終報告書にまとめる作業をしており、国際的学術雑誌への投稿も予定している。
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