Research Abstract |
今年度は,これまでに行った4つの実験(複合文脈と場所文脈,10分と1日で同文脈反復優位の結果)の再検討から始めた。その結果,(1)4つの実験は,文脈の種類(複合vs場所単独)×分散間隔という実験にまとめるべきであること,(2)その場合,分散間隔と保持期間に交絡が存在すること,(3)エピソード手がかりを用いる自由再生だけで,脱文脈化について言及するのは問題であることを確認した。 そこで,今年度は,まず自由再生課題で,場所のみの文脈操作と場所・符号化課題・社会的要因を複合させた文脈のそれぞれにおいて,分散間隔10分・保持期間1日の実験を行った。その結果,複合文脈では,これまでと同様に同文脈優位の結果を得た。これに対して,場所単独文脈では,方向としては異文脈有意であるが,明確に有意でない結果を得た。この点については,平成19年度に,もう少し実験加者を増やして,さらに検討するよていである。 また,対連合課題を用いた実験も行った。文脈は大学の教室での学習と自宅学習という操作を行った。自宅学習文脈では,自宅学習用プログラムをCDで配布し,実験参加者が自分のノートPC(本研究代表者の所属学部では,入学時に,学部生全員がノートPCを購入している)を用いて行った。条件は,同文脈反復(大学-大学,自宅-自宅)と異文脈反復(大学-自宅,自宅-大学)を設け,大学のゼミ室で対連合学習テストを行った。そして,異文脈反復有意の結果を得た。注目すべきは,大学と自宅という大きな文脈変化(場所,個人vs集団,その他の状況)があるにも関わらず,異文脈反復有意の結果を得たということである。このことから,自由再生や対連合という記憶の評価法も絡めた検討が必要であることがわかる。実験は,研究代表者と分担者とで分担して,それぞれの研究機関で,実験補助者をアルバイターとして雇用した。
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