2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17500686
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中根 美知代 日本大学, 理工学部, 非常勤講師 (30212088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植松 英穂 日本大学, 理工学部, 教授 (70184968)
仲 滋文 日本大学, 理工学部, 教授 (60120515)
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Keywords | 量子力学 / 天体力学 / 解析力学 / 物理学史 / 数学史 |
Research Abstract |
解析力学のハミルトン・ヤコビ理論が、量子力学の形成において不可欠な数学的方法であることは、すでに多くの科学史の著作で指摘されている。しかし、さまざまな側面を持つハミルトン・ヤコビ理論のどの点が具体的に重要なのかは、まとまった形で述べられていなかった。今年度の研究を通じて、すでに言われている変分原理に基づく理論構成という要素のほかに、(1)ハミルトン・ヤコビ方程式が容易に解けるためには変数が分離するという性質が必要であるとの認識、(2)作用-角変数の導入、(3)ハミルトン系という数学形式の持つ性質(リュービルの定理、周期解)、(4)正準変換の概念を挙げられることができた。 たとえば、作用-角変数の概念やハミルトン系と周期解の関係は、1840年代のヤコビ自身による『力学講義』のなかにはみられない。また、(1)やリューヴィルの定理、正準変換については、『力学講義』で一通り言及されてはいるものの、量子論に適用できる段階ではない。これらは、その後の物理学、とりわけ天体力学の成果に基づくものであることが指摘できた。実際、Bohr, Born, Schwarzschildらは、1902-1907年に出版されたC.V.C.Charlierの教科書Die Mechanik des Himmelsをしばしば引用していた。 ただし、ヤコビ流の解析力学は英国やドイツでは普及していたが、フランスではそうではなかった。ヤコビの成果は天体力学に必要な部分に限定して受け入れられ、英・独とは違う形で発展させられていった。CharlierやSchwarzschildが、Poincareから直接的な影響を受けていたことは跡付けられた。ヤコビの形式と天体力学からの成果がまとめられ、今日見るようなハミルトン・ヤコビ理論が形成される過程の分析も必要であることが明らかになった。
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