2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17500686
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中根 美知代 日本大学, 理工学部, 研究員 (30212088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植松 英穂 日本大学, 理工学部, 教授 (70184968)
仲 滋文 日本大学, 理工学部, 教授 (60120515)
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Keywords | 量子力学 / 天体力学 / 解析力学 / 物理学史 / 数学史 / 前期量子論 |
Research Abstract |
昨年度の研究から、解析力学の手法が前期量子論に効果的に適用できたもっとも重要な要因は、量子的な現象を記述する変数が正準形式で記述できたことである、と考えるにいたった。そこで、そのような変数を導入する手法である、正準変換の理論の発展過程を重点的に分析した。 正準変換の理論は19世紀半ば、C.G.J Jacobiが完成していたと考えられており、それ以上の考察はなされないでいた。しかし、Jacobiの理解では、実際に正準変換を行なうことができない水準であることがわかった。そして、それに達するためには、PoincareとCharlierが本質的な寄与をしていることが明らかになった。Poincareは、1890年代に正準変換の考察を行い、『天体力学の新しい方法』(1892-1899)で正準変換について、ハミルトン・ヤコビ方程式との関係をおぼろげにつかんでいた。それを証明し、ハミルトン・ヤコビ方程式と正準変換の理論の関係を正しく捉えたのはCharlierで、著書『天の力学』(1902/1907)に見られる。実際に正準変換を行い、天体力学でよく使われる角変数が正準変数となることを示したのも彼であった。Charlierの成果とSchwarzshildの1916年論文を対比させることにより、Schwarzshildが天体力学での結果をどのように拡張して作用-角変数として整備し、量子論に適用できるように修正していったかを具体的に跡付けることができた。 また、Schwarzshildが自分の導入した正準変数を考察しながら、相空間(q,p)の概念をそれまで以上に整備していること、その成果をもとに、さらに量子論の研究が発展していったこともわかった。彼らは、すでに確立していたハミルトン・ヤコビ理論を適用しただけではなく、量子論を整備しながら、その数学的方法も洗練していたのであった。
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Research Products
(1 results)