Research Abstract |
都市の表面形状が夜間ヒートアイランド形成に関与していることは確からしい.しかし,どのように関与するかについては,(1)長波放射収支量の減少を小幅にすること,(2)建物に起因した大きな粗度による都市大気の混合が接地逆転の形成を妨げることの2通りのメカニズムが考えられ,どちらのメカニズムが大きな寄与をしているかについてはよく分かっていない.本年度の研究では、(1)長波放射収支量の減少を小幅にするメカニズムがヒートアイランドにどの程度効いているかを実証的に評価するための観測データの収集を行った.調査対象都市は,異なるサイズの5都市である.東京,福岡,那覇市,長野県上田市,長野県小布施町においてデータロガーによるインターバル観測,移動観測,都市表面指標の調査を行った.移動観測については,都市と郊外の地点決定のため資料として利用した.東京地区は東京-千葉問の高速道路を利用し,福岡は既存の論文資料を利用した.他の都市は地上の道路を利用して観測を行った.インターバル観測資料については,気象庁の観測記録の他,データロガーを設置して自前で観測を行った.東京については,気象庁の大手町の観測記録と千葉県にある千葉敬愛大学の観測記録を利用した.福岡については独自に市街地2箇所と郊外4箇所の地点に6つのデータロガーを設置した.那覇市については市街地に2箇所,市街地上空の気温としてビルの上に1箇所,郊外に2箇所,郊外上空の地点として1箇所,都市内の公園内に1箇所にデータロガーを設置した.上田市については,都市内の地点として2箇所,都市上空の地点に2箇所,郊外に1箇所,郊外上空に1箇所にデータロガーを設置した.小布施町には都市内の地点に2箇所,都市上空の地点に1箇所,郊外の地点に2箇所,郊外上空に1箇所の地点を選びデータロガーを設置した.都市表面指標として,天空率,容積率,建坪率,緑被率,粗度である.なお,那覇,小布施以外の都市は本年度1年間わたる1時間毎観測を終了し,次年度解析に取りかかる予定である.また,昨年度報告した観測資料の解析と人工気象室における都市と郊外のスケールモデル実験の結果については英国の学会誌に投稿中である.
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