2006 Fiscal Year Annual Research Report
酸素同位体比測定による南極底層水低塩化過程と淡水循環変動の実態把握
Project/Area Number |
17510001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 茂 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (80281583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 威信 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (80312411)
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Keywords | 南極底層水 / 酸素同位体比 / 海洋淡水化 |
Research Abstract |
南極大陸沿岸は世界で最も重い南極底層水の生成域であり、世界中の大洋に底・深層水を供給している。南極沿岸海洋表層の密度低下は、密度成層の強化を通じて地球規模の海洋子午面循環の弱化を引き起こし、大気との熱交換に影響を与えて気候変動のトリガーとなりうる。このような気候変動においても重要な過程を明らかにするため、南極沿岸海洋変動の実態を把握することが急務となっている。またそうした密度変動を引き起こす上で重要となる淡水循環の変動要因を特定するためには、酸素同位体比を用いた解析が極めて有効である。 前年度はデータ解析に基づいてアデリーランド沖における南極底層水の淡水化を明らかにしたが、ロス海において同位体比測定用のサンプルと同時に取得した開洋丸のデータを解析することにより、近年、同海域においても底層水が顕著に低塩化および高温化していることが分かった。この変化に伴う密度変化は、アデリーランド沖における変化をしのぐものであり、地球規模の深層循環に対する影響が考えられる。 同位体比測定については、前年度末にウェデル海で取得した約2,500の海水サンプルの日本への輸送が完了し、これについても分析を開始した。また、積雪による淡水化のエンドメンバーを決定するために、南極昭和基地での通年積雪サンプル取得を依頼・実施した。 また研究分担者は2006年9月に行われたウェデル海における冬季海氷・海洋観測に参加し、表層海水ならびに積雪・海氷について酸素同位体比の測定を行った。海氷の同位体比は、同位体分別により、母海水+0.1パーミル程度となることが分かった。また積雪の同位体比は-17パーミル程度になることが分かった。これにより、積雪による淡水フラックスのエンドメンバーの見積もりを与えるとともに、低緯度への淡水輸送過程における海氷の同位体比変化についての知見が得られた。
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