2007 Fiscal Year Annual Research Report
酸素同位体比測定による南極底層水低塩化過程と淡水循環変動の実態把握
Project/Area Number |
17510001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 茂 Hokkaido University, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 威信 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (80312411)
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Keywords | 南極底層水 / 酸素同位体比 / 海洋淡水化 |
Research Abstract |
南極大陸沿岸は世界で最も重い南極底層水の生成域であり、世界中の大洋に底・深層水を供給している。南極沿岸海洋表層の密度低下は、成層の強化を通じて地球規模の海洋子午面循環の弱化を引き起こし、大気との熱交換に影響を与えて気候変動のトリガーとなりうる。このような気候変動への影響から、南極沿岸海洋変動の実態とその原因を把握することが急務となっている。海洋密度変動を引き起こす上で重要となる淡水循環の変動要因を特定するためには、酸素同位体比を用いた解析が極めて有効である。今年度は前年度までに取得した東南極の陸棚上の海水サンプル、海洋上での積雪サンプルなどの分析を行った。また、5つの国内・国際観測計画(東経110度、東経40〜70度x2、東経140度x2)に参加・観測依頼し、同位体分析用サンプルを取得した。本年度分析を行ったサンプルから、以下のような結果が得られた。季節混合層内の低塩化に寄与する成分には、海氷融解に起因する分と積雪融解に起因する分があるが、酸素同位体比組成から、海氷の融解に起因する成分のみを特定した。この結果、東経30度の観測点数点で、海氷厚は水換算で40cm程度とみつもられた。これは従来この海域で指摘されている値と整合的であり、酸素同位体比を表層内部の塩分分布と併せることでより正確な海氷厚の評価に道を開くものと期待される。また、夏季船上観測中に取得した積雪の同位体比には、-3‰・-13‰・-23‰の3つのクラスターが確認できた。最も軽い同位体比は豪モーソン基地で取得した根雪にみられ、高緯度ほど軽い酸素同位体がみられる従来の描像と整合的であるが、海上での降雪にも10‰を超える変動幅が確認され、海水中の降雪に起因するエンドメンバーの幅の重要な情報が得られると同時に、降雪の起源推定の重要性を示唆する。
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