2006 Fiscal Year Annual Research Report
化合物別安定同位体比分析を利用した沿岸海洋生態系の環境診断指標の開発
Project/Area Number |
17510004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮島 利宏 東京大学, 海洋研究所, 助手 (20311631)
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Keywords | 沿岸海洋 / 物質循環 / 生態系 / 環境指標 / 安定同位体比 / 温室効果ガス / 海草藻場 / マングローブ |
Research Abstract |
人間活動の影響による改変を受けている海洋沿岸域生態系において物質循環系の自然的・人為的変化とその履歴を診断するための環境指標を構築するために、安定同位体比(特に化合物別同位体比)を適用する基盤的研究を行った。2年の研究期間における主要な実績は以下の3項目にまとめられる。 1.河口域および海草藻場生態系において堆積物の脂質の炭素安定同位体比を陸域由来および海草由来有機物負荷の評価のために利用することを試み、これをアンダマン海沿岸の海草藻場等に適用した。海草に由来する脂質は他の起源の脂質に比べて同位体比が明瞭に高いことから、津波や季節風の影響によって堆積物中に埋没した過去の海草藻場の痕跡を高感度に検出できることが分かった。 2.河川の影響が強い閉鎖性海域において海水中の硝酸態・アンモニア態窒素安定同位体比の変動を有機汚濁による貧酸素水塊の消長に伴う硝化と脱窒のダイナミズムの解明に適用した。これらのプロセスによる見かけ上の同位体分別係数を求め、諸外国における研究例と比較した。 3.汽水域における溶存無機炭素の炭素安定同位体比の空間分布から、マングローブから海洋への二酸化炭素の負荷を定量的に求める方法を考案し、沖縄とマレー半島の河口域に適用した。従来の研究ではマングローブの落葉から溶出する溶存態有機物が汽水中で微生物の酸素呼吸により分解されて二酸化炭素が発生するとされていたが、我々の見積では海水中の飽和酸素濃度をすべて呼吸に使ったものとして計算される最大二酸化炭素負荷量よりもさらに最大2倍程度の二酸化炭素が河川水に流れ込んでいることが判明し、二酸化炭素負荷のメカニズムについて再検討する必要があることが分かった。 これらと並行して同位体比指標の概念と有用性を一般に紹介する図書の編集・出版を企画した。他の研究者との共同執筆の形で平成19年度に刊行する予定である。
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Research Products
(1 results)