2006 Fiscal Year Annual Research Report
ため池の内部生産に及ぼす周辺植生の影響に関する研究
Project/Area Number |
17510021
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Research Institution | Saitama Univ. |
Principal Investigator |
須藤 隆一 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 客員教授 (70109916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 明子 淑徳大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90348350)
田中 仁志 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (40415378)
木持 謙 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 主任 (50415379)
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Keywords | ため池 / 森林植生 / 落葉 / 水質 / 水圏生態系 |
Research Abstract |
湖沼などの閉鎖性水域では、周辺環境に依存した水質や水圏生態系が構築されると考えられる。本研究の目的は森林植生の違いが湖沼の内部生産に与える影響を明らかにすることである。研究最終年度の平成18年度は、野外実験池を用いて、針葉樹(スギ)及び広葉樹(クヌギ)の異なる樹木の落葉を次の条件(池水1tあたり乾燥落葉1kg)で投入し、水質の経時変化をモニタリングした。 実験池1:対照区(落葉無投入) 実験池2:広葉樹区(クヌギ落葉2.8kg投入) 実験池3:針葉樹区(スギ落葉2.8kg投入) 実験池4:混合区(クヌギ1.4kg+スギ1.4kg投入)。 その結果、次の点が明らかになった。 (1)水質調査項目の最大濃度と実験経過日数は、広葉樹区はCOD最大53ing/L(3〜5日後)、T-N最大4.1mg/L(4〜7日後)及びT-P最大0.43mg/L(1日後)だったのに対し、針葉樹区ではCOD最大24nig/L(14〜21日後)、T-N最大1.8mg/L(14日後)及びT-P最大0.02mg/L(14〜21日後)であった。いずれもスギよりクヌギの方が短期間で最大濃度に達した。 (2)(1)より、針葉樹区のCOD、T-Nの最大濃度は広葉樹区の約5割、T-Pでは1割未満であり、同一重量あたりの落葉からの有機物、窒素及びリンの溶出量はクヌギの方がスギよりも大きかった。 (3)Chl-aの最大濃度は、広葉樹区で13μg/L、針葉樹区及び混合区では10μg/Lとなり、スギよりクヌギの方がやや大きい値を示した。 (4)広葉樹区、針葉樹区及び混合区のすべてにおいて溶存酸素濃度5nig/L以下が1ヶ月以上続いた。 以上の実験結果から、森林植生の違いにより湖沼等に異なる水質が形成される可能性が示された。さらに、湖沼に直接落下した落葉は種類にかかわらず、湖沼水の低酸素化を引き起こし、水生生物へ直接的な影響を及ぼす恐れがあることが分かった。
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